研究概要 |
本研究では、有機金属化合物気相成長(MOVPE)法による厚膜高品質高In組成InGaN結晶成長のための基盤技術の確立を目指している。具体的には,(1)従来ほとんど試みられた例の無い圧力印加可能なMOVPE装置の設計・製作,(2)成長中の圧力印加によるInGaNの超高速横方向成長,(3)GaN基板上,ナノサイズの周期的GaNコアロッドへのInGaN極太ロッド成長,(4)高InNモル分率InGaNのp型結晶の実現、を行う。本研究により,*効率250[lm/w]かつ演色評価数(CRI)>75以上の白色発光ダイオード(LED),*出力1[W]以上の緑色レーザダイオード,*集光時効率60[%]以上の多接合型太陽電池の実現が期待される。本研究による二酸化炭素排出削減効果は2020年時0.6億トン,国内新市場規模は7兆円程度と試算される。 平成22年度では最高圧力2気圧までの装置を試作し、InGaN厚膜の成長実験を行った。平成23年度は、2気圧までの加圧装置でInAlNの成長を行い、熱力学計算での予測と一致することを確認し、更に装置を改造して最高圧力8気圧まで加圧可能とした。これ以上の圧力ではアンモニアが液化してしまうため、上限の圧力である。MOガス用バッファタンクを2つとし、TMGaとTMInをそれぞれ加圧して同時及び交互に供給できるようにした。厚膜成長は同時、多重量子井戸構造成長は交互及び同時に供給した。InGaN厚膜の成長では1気圧から6気圧まで成長を行い、熱力学計算に従って圧力増加とともにIn組成が増加することを確かめた。また、多重量子井戸構造の成長を行い、X線回折により構造の形成を確認し、更に室温でのフォトルミネッセンス(PL)も確認することができた。加圧型MOVPE装置においてPLを観測した例はこれまでなく、世界初の快挙と言える。
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