研究課題/領域番号 |
22246006
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長谷川 修司 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (00228446)
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研究分担者 |
平原 徹 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教 (30451818)
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キーワード | 超伝導 / マイクロ4端子プローブ / モノレイヤー / 表面電気伝導 / 表面超構造 |
研究概要 |
昨年度開発・製作・立ち上げたミリケルビン・マイクロ4端子プローブ装置を用いた実験により、以下の成果が得られた。 (1)モノレイヤー・インジウム(Si(111)-√7×√3-In表面超構造):臨界温度2.77Kで電気抵抗がゼロとなり、超伝導に転移した。この臨界温度は、走査トンネル分光実験によって超伝導ギャップが観測された約3.5Kより低い。これは、ゼロ抵抗を生み出すグローバルなコヒーレント超伝導状態になるには局所的な超伝導ギャップの形成温度より低温が必要であることを意味している。また、0.8Kにおけるde-pinning臨界磁場は0.33T、上部臨界磁場は0.43Tであり、そこから見積もられたコヒーレンス長23nmはバルクインジウムより1桁程度短いこともわかった。 (2)モノレイヤー鉛:Si(111)表面上のモノレイヤー鉛が作る表面超構造のうち、SIC(Striped Incommensurate)相と呼ばれる構造の電気抵抗を測定したところ、1.1Kで超伝導に転移することがわかった。これは走査トンネル分光法による超伝導エネルギーギャップの観測臨界温度1.83Kより低いので、インジウムの場合と同様に、グローバルにコヒーレントな超伝導状態になるには、より低温が必要と言える。また、0.8Kにおけるde-pinning臨界磁場は0.03T、上部臨界磁場は0.11Tとなり、インジウムに比べて1桁程度小さい。しかし、これらの値から見積もられたコヒーレンス長33nmはバルク鉛の値より1桁程度短い。 (3)モノレイヤーインジウムおよび鉛の超伝導コヒーレンス長はいずれも20~30nmで、バルクの値より1桁程度短い。これはキャリアの平均自由行程で決まっており、また、テラス幅よりはるかに短い。このことから、表面原子ステップは、超伝導電子の主な散乱体ではなく、テラス上の欠陥がコヒーレンス長を決めていると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で開発したミリケルビン・マイクロ4端子プローブ装置が順調に稼働を始め、「研究実績の概要」欄で述べたように2種類のモノレイヤー超伝導を確認することができた。これは、本研究で当初から目論んでいた成果であり、予定通りに研究は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ミリケルビン・マイクロ4端子プローブ装置は稼働を始めたが、誤操作のためにいくつかの故障を引き起こし、その修理に追われた。まず、装置の安定稼働のために、必要な改良と操作スキルの向上を目指す。表面状態での超伝導を示す可能性のある物質系が多数存在するので、それらを系統的に調べる。
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