研究課題
昨年度開発・製作・立ち上げたミリケルビン・マイクロ4端子プローブ装置を用いた実験により、以下の成果が得られた。BiおよびBi$_{2}$Te$_{3}$エピタキシャル超薄膜の反弱局在効果・電子電子相互作用効果の測定:BiやBi2Te3の低温・磁場中でのバルク伝導測定では、強いスピン軌道相互作用に起因した量子干渉効果である反弱局在効果や、クーロン遮蔽が弱まることによって生じる電子電子相互作用の多体効果によって伝導度が特徴的な変化を示すことが報告されている。一方、Bi(111)とBi2Te3(111)はそれぞれRashba分裂表面状態、トポロジカル表面状態といったスピン分裂表面状態を持っており、これらの状態はベリー位相πのために強い反弱局在効果を示すと言われている。しかし、先行研究の多くは試料の大気暴露のために表面状態は保護されておらず、表面状態の寄与は明らかになっていない。本研究では上記の効果の表面状態の寄与を明らかにする目的で、様々な膜厚のBi(111)やBi2Te3(111)エピタキシャル超薄膜を作成し、超高真空・低温・磁場中でのit in-situ伝導測定を行い、反弱局在効果と電子電子相互作用に特徴的な伝導度の変化を観測し、これらの効果に関するパラメータの膜厚依存性を調べた。その結果、Bi(111)のRashba分裂表面状態は量子効果への寄与をほとんど持たず、観測した伝導度依存性は膜内伝導由来であることを明らかにした。一方、Bi2Te3(111)では、3-6QL(1QL=5原子層からなる結晶格子の単位)の薄い膜ではトポロジカル表面伝導由来の量子効果が大きく、膜厚の増加とともに膜内伝導の量子効果の寄与が増加していくことがわかった。また、位相緩和長が膜厚に比例する依存性を示しており、これは膜内伝導電子が表面状態電子に散乱されて位相緩和することを示唆している。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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