研究課題/領域番号 |
22246015
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研究機関 | 宇部工業高等専門学校 |
研究代表者 |
藤田 和孝 宇部工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (10156862)
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研究分担者 |
山崎 徹 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30137252)
徳永 仁夫 宇部工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (70435460)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 金属ガラス / ナノ結晶合金 / アモルファス合金 / 引張塑性変形 / 加工硬化 / 靭性 / 熱的構造安定性 / フラクトグラフィ |
研究概要 |
金属ガラス合金(MGA)とナノ結晶(NCA)合金の塑性変形機構解析のため、高速度ビデオカメラ(H22年度購入)も用いて塑性変形過程の観察を行った。まず、金属ガラス合金(MGA)においては、分担者;山崎徹教授が探索をほぼ終了した高粘性でナノメートルサイズの準結晶が析出する組成の材料(主としてZr65CuAlX3)を作製し、代表者;藤田和孝と分担者;徳永仁夫准教授が引張試験を実施した。なお同材料は昨年度の圧縮試験においては20%を超える大きな塑性変形が生じている。常温における引張試験の結果、従来の亜共晶材と同様、約1%の塑性変形が生じ、加工軟化を示した。しかし、本材料は従来材ではほとんど生じなかった明瞭なセレーションが多数生じ、より多くのせん断帯の発生・成長・交切を確認した。このセレーションは、本材料では、主として塑性変形中に準結晶が析出・成長することやせん断帯の交切等により、すべり抵抗が桁違いに大きくなり、一旦、一つのせん断帯ですべってもすべり切らず停止することを繰返したため生じたものとみられる。SEM観察においても、明らかにより多くのせん断帯が見られた。より詳細な機構の検討は、次年度に行う。 また、NCAの塑性変形は、昨年度、Niの多い網目状をなすナノ結晶粒に沿いせん断すべりが生じるのではなく、むしろ網目状組織とは無関係に直線的にせん断すべり変形していることを確認した。しかし、今年度、研究分担者;山崎徹教授により電析基盤の表面あらさを変える等、製法を変え作製された材料では、強度は変わらないが、従来材よりもより大きな塑性変形が出る場合があり、この時、せん断すべりはNiの多い網目状をなすナノ結晶粒に明らかに影響を受け生じており、Ni同士の金属結合が多いナノ結晶において、塑性変形が助長されていると見られた。すべりやすい網目状をなすナノ結晶の組成の検討等は次年度の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[1]金属ガラス合金とナノ結晶合金の塑性変形機構については、高速度ビデオカメラ観察も通じて、それらの発現機構の大略は明らかになった。[2]金属ガラスでより大きな塑性変形を生じさせるために、粘性の大きな組成を探索し、その効果を圧縮試験ばかりではなく、引張試験も実施し、顕著な効果があることを確認した。ナノ結晶合金では網目状組織は基本的に塑性変形に寄与していないとみられたが、作製方法を変えた試料では関与しており、より大きな塑性変形が生じる様になった。今後さらに詳細な検討が必要である。[3]ナノ結晶合金の塑性変形時には、ナノ結晶が成長していることをTEM観察を通じ、確認した。 このように、従来の材料と比べ、より高強度で、靭性のある新規な金属材料の開発につなげられる確かな芽が出てきており、これらを上手く使うことにより、研究の目的が達成される可能性がかなり高まってきたと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
ナノ結晶合金については、極短時間の引張塑性変形時にナノ結晶が成長して、すべりを止め、加工硬化率が大幅に上昇していること、また、Ni結合の多いナノ結晶をネットワーク状に分散させることで、高強度は維持したまま、よりすべりやすい構造を作れることが観察され始めた。金属ガラスについても、粘度の高い材料の引張試験において、多くの大きなセレーションを出すことに成功した。すなわち、一つの貫通した主せん断帯ですべり切り破断するのではなく、一旦すべり始めても、これを止めることができるようになってきたため、熱処理や予加工により、多くのナノサイズの準結晶を析出させることにより、より大きな塑性変形発現を実現できることが期待できる。ただし、依然として加工硬化の発現が見られないが、これも熱処理や予加工により、多くのナノサイズの準結晶を析出させること、また、より結合強度の高い元素を添加することで高温での粘度をさらに上げ、達成を計る。材料作製は試行錯誤によるところもあるが、これらの関係を上手く使えれば、超高強度と高延性を両立した合金が作製できると思われ、この方向をさらに推進する。
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