研究概要 |
本研究は,ウインドシアー(風による剪断力),降雨およびうねりの3つの因子が同時に存在する風波気液界面を通しての運動量,熱および物質の輸送機構の解明と各々の輸送量の評価を流体工学の立場から風波乱流水槽を用いた室内実験および気液二相流に対する数値計算を用いて行うことを目的とする.平成23年度の研究実施概要を以下に示す. (1)風波気液界面を通しての運動量・物質輸送に及ぼすウィンドシアーおよびうねりの影響の解明:物質の輸送実験では,レーザドップラ流速計,粒子画像流速計,粒子径測定器などを用いて気液両層の流速,CO_2濃度等を計測することにより,物質のフラックスを測定した.その結果,砕波を伴う風波気液界面を通しての物質輸送に及ぼす巻き込み気泡の影響は風速20m/s以下の風速域においては,小さいことを明らかにした.さらに,運動量の輸送実験では,レーザドップラ流速計を用いて気側流速の変動を計測した結果,砕波を伴う高風速下において,抗力係数は風速の増加とともに一定値に近づくことを明らかにした. (2)気液二相流の数値計算手法の確立と風波気液界面近傍の乱流構造の解明:平成22年度に実施されたLevel-Set法を用いた3次元直接数値シミュレーション(DNS)による単一液滴の自由界面衝突後の液側流動分布より,液滴衝突後に生成される渦輪および渦管の強度を定量的に評価し,その強度と衝突する液滴の運動量との相関関係についてより詳細な検証・解析を行った.その結果,鉛直衝突と斜め衝突の場合では,渦輪および渦管の強度は大きく異なることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
物質の輸送実験では,平成22年度に確立された二酸化炭素フラックスの高精度測定法を用いて,砕波域における二酸化炭素フラックス量の測定を行った.また,運動量の輸送実験では,平成22年度に確立された液滴の飛散を伴う気流速の測定法を用いて,砕波域における運動量フラックス量の測定を行い,砕波を伴う高風速域において抗力係数が一定となる非常に興味深い結果を得た.さらに,数値計算においては,液滴衝突に関してより詳細に解析を行うことを通じて,液滴衝突時の気液間物質輸送モデルを確立した.以上より,研究の目的は,当初の計画通りおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
物質の輸送実験では,平成22年度に確立されたCO_2フラックスの高精度測定法を用いて,ウインドシアー(風による剪断力),降雨およびうねりの3つの因子が同時に存在する風波気液界面を通しての物質フラックスを測定することにより,3つの因子の影響を検証する.運動量の輸送実験では,砕波域における風波の水位変動計測技術の確立を目指す.
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