本研究は,ウインドシアー(風による剪断力),降雨およびうねりの3つの因子が同時に存在する風波気液界面を通しての運動量,熱および物質の輸送機構の解明と各々の輸送量の評価を行うことを目的とする.本年度の研究実施概要を以下に示す. (1) 風波気液界面を通しての物質輸送に及ぼす降雨およびうねりの影響の解明:物質の輸送実験では,レーザドップラ流速計,粒子径測定器などを用いて気液両層の流速,CO2濃度等を計測することにより,物質のフラックスを測定した.計測は,風が吹き始めてからの距離である吹送距離が4mおよび13.5mの地点において行った.その結果,吹送距離4mおよび13.5mの地点では風波の大きさが異なるものの,降雨による物質輸送の促進効果は吹送距離に依らないことを明らかにした.また,さまざまな波長のうねりを伴う風波気液界面を通しての物質輸送の実験を行うために,波長制御が可能な造波装置を製作した. (2) 強風速下における砕波特性の解明:液滴の飛散を伴う風波乱流場中における水位変動の測定を行った.その結果,水位変動のエネルギおよび卓越周波数より求められる風波の局所平衡則に関する特性量が,砕波を伴う高風速域において一定値を取ることを明らかにした.また,抗力係数と水位変動のエネルギおよび卓越周波数との良好な相関関係を明らかにした. (3) 気液二相流の数値計算手法の確立と液滴の衝突を伴う気液界面近傍の乱流構造の解明: 水面変形の追跡手法としてVOF法を用いた3次元直接数値シミュレーション(DNS)により,単一液滴の自由界面衝突後の液側乱流場の計算を行った.液側流速分布および液側二酸化炭素濃度分布より,液滴衝突後に促進される気液界面を通しての物質輸送機構について詳細な検証・解析を行った.その結果,液滴衝突後に生成される渦輪により界面は更新され気液間物質輸送が促進されることを明らかにした.
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