研究概要 |
本研究では,制限ナノ空間における溶媒および溶質分子の高次構造,流動性および電気特性の高速・高精度解析を目指し,量子・分子流動ダイナミクスに基づく新しい数理体系の構築とその応用技術を探索する.系に異種界面を包含し,バルクとは異なる分子流動場を制限ナノ空間として統一的に捉え,境界条件や拘束条件下で発現する新奇な物理・化学・生命現象を見出すとともに,これらの理論並びに実験の両面からの解明を目指す.バイオチノテクノロジー,生命機能および環境保全分野における先端的応用技術に関連してナノ孔によるDNAシーケンシングや分子トモグラフィー技術開発,生体膜におけるイオンチャネル内の分子流動あるいは燃料電池内異種界面におけるプロトン輸送等の解明が期待される. 平成23年度は,実施計画に挙げたように,最先端のMEMS/NEMS技術を導入することでDNAの持続長と同程度の長さスケールを持つ流路の作製を可能とし,それを用いてλDNAの流動を可視化観察に成功した.制限ナノ空間においてλDNAの電気移動度に明確な差が現れ,バルクとは異なる流動特性が明らかにされた.本課題は,当初の目的を達成し,その成果は米国機械学会誌亀(ASME J.Fluids Eng.)に掲載された.もう一つの課題として,イオン交換膜を介したプロトン流動の計測とその制御を試みた.イオン交換膜に蒸着された外部銀電極により,プロトン流動を能動制御することにより,過電圧が抑制されることが示された.この物理現象に関して理論モデルを用いて説明を行った.また,固体高分子膜の分子構造がプロトン伝導に影響を及ぼすことから,膜構造を評価するための解析手法を考案した.この成果は,米国物理学会誌(Phys.Rev.E)に掲載され,さらに国際会議および国内専門学会にて発表を行った,その他,次年度の目標を運成するための基礎実験ならびに理論構築を行った.
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