研究概要 |
本研究は遺伝情報物質であるDNAをナノワイヤ・ナノパターンの母材として位置付け,また自動位置決めにかかわる性質を応用することにより,機械知能学の観点でナノパターン自動生成に応用しようというものであり,生体高分子の自動認識・組立て機能とMEMS技術の融合を図るところに特色がある.研究全体を通じて,DNAによる自己整合型ナノワイヤの製造方法とその可能性を追求するところが,本研究の目的である.研究ツールとして,AFMによるナノリソグラフ,表面修飾によるDNA単鎖の固定,電子顕微鏡によるマーカーの撮影,観察などの要素技術を用いる.本年度はDNAの直線状配置およびめっき抜術ついて,実験的に検討した.初めに直線状配置技術に関しては,DNAを含む溶液を基板上に滴下させ,液滴が乾燥するとき表面張力により線状物体が乾燥界面に順次固定される現象を用いたが,液滴中心から放射状に配置されることを避けるため,基板を45度傾斜させて重力により液滴が一方の界面のみ縮退させる方法を提案した.また,DNAを溶かすバッファについても検討を行い,基板上に複数のDNAを直線状に固定できることを確認した.一方めっき技術については,DNA二重らせん構造に選択的にはまり込む白金化合物として抗癌剤であるシスプラチンを用いた.シスプラチン中の白金は触媒として作用するので,こののち銀めっきを行うと白金の周辺で選択的に還元作用がおこり,銀が析出する.前述の方法で基板に直線状に固定したDNAに対してシスプラチンを作用させ,この後銀鏡反応を用いた銀めっきを行った.これより30nm程度の銀ナノワイヤの生成が確認され,DNAを母型としたDNAナノワイヤの構成を行った,これらはクリーンブースの中の清浄環境で行うとともに,マスクアライナにより観察用マーカーを作製し,実験のクリーン化,高精度化を進めることが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
もう一つの重要な要素技術であるDNAの位置決めについては,当初より実験を行っているところであるが,技術的な点で難易度が高く,今後とも進捗に努める.その他の要素技術についてはほぼ順調に進んでおり,最終的にこれらを統合して位置決めとめっき技術の統合を目指す.
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