研究課題
本研究では、極めて短時間のうちに生じている光の変化を画素単位で捉える排出制御型電荷変調素子DOM (Draining Only Modulator)を用いた高時間分解撮像デバイスを開発し、次世代バイオイメージング、超高分解能3次元計測に応用することを目標としている。本年度は、DOM素子を256×256画素搭載した蛍光寿命イメージセンサを試作し、1ns~25nsの範囲の4種類の蛍光物質に対する蛍光寿命計測に成功した。1回の励起パルスあたり1電子未満の微弱光領域に対して、画素アレイ中央の10×10のすべての画素において線形特性が得られ、転送路におけるポテンシャルバリアのない構造が再現性良く実現できることが示された。また蛍光寿命の測定結果から、約2nsのDOM素子に起因するオフセット寿命が存在することが明らかとなった。さらにドレイン領域の電子が界面トラップによってすくいあげる効果により電荷オフセットが発生する現象がみられた。これはショットノイズを引き起すため、低減する必要がある。これらの課題を残しながらも、2.5nsと10nsの2種類の蛍光体を組み込んだ細胞に対する蛍光寿命のイメージングを行い、両者の減衰速度の明らかな違いを画像として観測することに成功した。また、DOM素子のTOF3次元計測に対しては、極短時間パルスで発生する光電流波形の立ち上がり部のみに検出時間窓を設定して検出することで高分解能化を図る方式に関して、デバイスシミュレーション及びその結果に基づく計算により、10um未満の奥行き分解能が得られる可能性が示された。また関連する成果として、センサの微弱信号を広いダイナミックレンジを保ったままデジタル信号として読み出す技術についても実現の見通しが得られた。
2: おおむね順調に進展している
蛍光寿命イメージセンサを実際に試作し、細胞のイメージングに既に成功しており、超高分解能TOF距離画像センサについても、次年度早々には、試作センサの評価が行える状態にあるので、ほぼ計画通りである。ただ、12月に投稿した蛍光寿命イメージセンサの試作結果についての成果論文の査読に時間がかり、4月現在、まだ条件付き採録の段階であり、成果論文として含めることができなかったことが残念である。この点を考慮し、(2)とした。
蛍光寿命イメージセンサに関しては、本年度の試作の結果、課題として明らかとなった点について構造的に改良を加え、次年度再度試作を行い、その改善効果を確認するとともに実用性を評価する。超高分解能TOF距離画像センサについては、次年度早々に試作センサの評価を行い、次年度後半に予定をしている試作に反映して、当初目標の100umの分解能を越える性能、あわよくばシミュレーションで予測された10umの分解能の実証を研究期間内で行うことを目標とする。これらにより、当初目標は最終的にほぼ達成できる見込みであり、特に大きな問題は発生していない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件)
IEEE Journal of Solid-state Circuits
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IEICE Electronics Express
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