研究概要 |
5mm四方のシリコンチップ上に200umの厚さで絶縁体層を形成しその上にアンテナを作成する構造を2種類検討した。1つはRF CMOS回路の差動動作に適した平衡素子であるダイポールを用いた構造である。シリコンチップに0.9mm×0.6mmの大きさの穴を開け,シリコンでの損失を防ぐためチップ全面に厚さ2umで銅膜を形成した。さらに絶縁体に直径0.2mmの穴を2つ開け側面に銅膜を厚さ2umで形成し給電用金属ポストを構成した。チップ下面にH型開口を設け,そこに導波管をあてて給電した。60GHz帯での利得の計算値5.4dBiに対し,実験値3.5dBiが得られた。 もう1つの構造は正方形の角を切り落とした円偏波パッチを同軸給電したものである。シリコンに直径0.5mmの穴を開けて側面に厚さ2umの銅膜を形成して同軸の外導体とした。またガラスビーズの直径0.22mmのピンを内導体とした。チップを落とし込む治具にチョークを設けてチップと治具の間からの漏れを防ぎ安定な動作を実現した。61.5GHzでの利得の計算値4.5dBicに対し,実験値3.9dBicが得られた。そのときの軸比の実験値は3.3dBであった。 光検出器を用いた60GHz帯小型アンテナ指向性測定を基礎検討した。外部変調方式の入出力特性を測定し,約40dBのE/O-O/E変換損失があり,従来のRF同軸ケーブルを用いた測定と同等の精度を得るためには,変換損失補償のため光増幅器の導入が不可欠であることがわかった。 撹拌器付きの反射箱を用いた小型アンテナの放射効率測定システムを,60GHz帯でも入手可能な約16dBiのホーンアンテナを基準に用いて10GHz帯で構築し精度を検証した。約2dBiのダイポールアンテナを基準とした場合と同程度の0.7dBの誤差で測定できることを確認した。
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