研究概要 |
5mm四方のシリコンチップ上に200umの厚さで絶縁体層を形成し,その上に正方形の角を切り落とした円偏波パッチアンテナを同軸給電する構造を検討した。前年度解析・設計した構造に関して,チップとそれを落とし込む治具の間からの漏れを防ぐために設けたチョークが正しくモデル化させていないことが分かった。モデルの修正を行い再設計し,実験値と計算値の間で良好な一致が得られた。 15mm四方のシリコンチップ上に2x2素子の60GHz帯円偏波パッチアレーを構成し,4相発振回路を同軸接続する構造を検討した。RF回路はシリコンチップの下面に格納される。2x2素子のアンテナ層は上面に設け,チップ穴を開けて同軸線路で給電しアンテナとRF回路を一体化した。現状ではRF回路チップは別体であるため,アンテナチップのシリコン基板下面に配線を設け,中央部に1mm角のRF回路チップをフリップチップ実装する構造を設計した。アンテナ部での損失は60GHzで0.8dBと低損失となり,アンテナチップ下面の励振位相調節線路を考慮すると同周波数で1.2dBとなった。同軸部の損失は0.2dB以下と小さいことが分かった。試作を行ったがアンテナチップ下面に厚さ30umの絶縁体層を設ける際にひびが発生した。現段階ではその問題を解決できなかった。 光検出器を用いた小型アンテナ指向性測定において,RF増幅器の動作周波数が50GHzであるため45GHz帯で行った。使用した光検出器が不良のためアンテナからの送信出力が約-50dBが弱くなったので,電波暗箱内に平面走査装置を設けてパッチの指向性を測定した。伝搬距離と受信アンテナの指向性補正を行い,従来の電波暗室でRFケーブルを用いた測定結果と良い一致が得られた。 電波反射箱と5枚の電波攪絆金属板を用いた60GHz帯小型アンテナの放射効率測定システムを構築した。基準アンテナとして利得15dBiのホーンアンテナ、被測定アンテナとしてパッチアンテナを使用し放射効率を測定し約-L2dBが得られた。この値は数値解析値と約0.2dBの誤差である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度試作が成功しなかった,シリコンチップ上に2x2素子の60GHz帯円偏波パッチアレーを構成し4相発振回路を同軸接続する構造の試作だけに最終年度は注力する。まずは,アンテナチップ下面の励振位相調節線路を設けるための厚さ30umの絶縁体層形成時に発生するひびの発生原因を解明する。そして,その発生を防ぐ対策を検討し,ひびを発生させずに厚さ30umの絶縁体層を形成する手法を確立する。その部分だけの試作を行い,ひびが発生しないことを確認し,最終的には全体構造の完成をめざす。
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