研究課題/領域番号 |
22246053
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
今井 秀樹 中央大学, 理工学部, 教授 (70017987)
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キーワード | サイドチャネル攻撃 / 共通鍵暗号 / 暗号の安全性評価 |
研究概要 |
本年度の主な研究成果は以下のとおりである. 1.既存のサイドチャネル攻撃対策手法についての安全性評価を実証実験により行った.本研究では, WDDL(Wave Dynamic Dual-rail Logic)とMAO(Masked and Operation)と呼ばれる2種類の対策手法を組み込んだ暗号モジュールに対し,相関電力解析, 相互情報量解析と呼ばれる攻撃法により攻撃することで安全性を評価した.実験の結果,相互情報量解析では対策済み暗号モジュールからの鍵の抽出が可能であり,これら2種類の対策手法は相互情報量解析に対しては十分な対策とはならないことを示した. 2.複数のサイドチャネル攻撃法を組み合わせることで,単体での攻撃よりも強力な攻撃手法を構成する方法が提案されている.本研究では組み合わせ法を網羅的に調査することで,既存の攻撃法よりも強力な攻撃法を発見した. 3.テンプレート攻撃と呼ばれるサイドチャネル攻撃は,予め攻撃対象と同種のチップに対してその特性を測定し,その特性を元に行う攻撃である.本研究では,テンプレート攻撃における特性抽出に機械学習を用いる方式を提案した.提案方式を用いた評価実験の結果,ハミング距離が大きい2つの鍵に対して,その違いの判定に成功した. 4.物理的複製不可能関数(PUF)は物理デバイスの製造時の微小な差異を利用し,デバイスごとに固有の情報を取り出す技術である.本研究ではPUFを利用することで電子回路の不正模倣品を識別する方式を提案し,その識別精度を実験により評価し,高い精度を持つことを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,暗号モジュールに対するサイドチャネル攻撃の本質の理論的解明を行うものである.この目標を達成するためにサイドチャネル攻撃の性能限界を見極める必要がある.現在,そのために様々な攻撃手法を用いた実証実験を行なっており,おおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方法については,まず,現在実施している暗号モジュールに対する評価実験により得られた知見を元に,サイドチャネル攻撃の性能限界を理論的に導き出す予定である.その上で,サイドチャネル攻撃一般に対する抜本的な対策技術の開発を行う予定である.
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