研究概要 |
本年度の主な研究成果は以下のとおりである. 1. サイドチャネル攻撃に対する対策法としてランプ型秘密分散法を利用したAES回路構成法を提案し,その安全性評価を実証実験により行った.サイドチャネル攻撃対策においては,暗号回路内の内部状態と回路の消費電力との相関を低減させることで,攻撃による回路の内部状態の推定を困難にする手法が従来より知られていた.本研究では,AES回路の内部状態をランプ型秘密分散法により二つに分割した状態で演算を実行する方式を提案し,攻撃者による内部状態の推定を困難にしている.提案手法を組み込んだAES暗号回路を評価用ボードに実装し,攻撃実験を行った結果,2000個の電力波形を利用して攻撃を行った際に未対策のAES回路では16バイトの鍵全体が特定できたのに対し,提案手法を組み込んだ回路では8バイトしか特定されなかった. 2. サイドチャネル攻撃対策手法として,Masked-And Operation, Wave Dynamic Dual-rail Logicなどの対策手法がこれまでに提案されている.これらの対策手法の差分電力解析及び相関電力解析に対する安全性評価は行われているが,相互情報量攻撃攻撃に対する安全性評価はこれまでに行われていなかった.相互情報量解析は他の攻撃とは異なり回路の内部状態と消費電力の相関が非線形であっても攻撃可能であることが知られているため,相互情報量解析によりサイドチャネル攻撃対策を施した回路に対しても攻撃が成功する可能性がある.本研究ではFPGA上に実装された攻撃対策済みのAES回路に対して相互情報量解析を実施し,対策回路の相互情報量解析に対する安全性を評価した.実験の結果,相関電力解析では攻撃困難となる対策回路であっても相互情報量解析により攻撃が可能な場合があることを示した.
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