研究課題/領域番号 |
22246054
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田村 進一 大阪大学, その他部局等, 名誉教授 (30029540)
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キーワード | 擬似ランダム系列 / 脳内情報通信 |
研究概要 |
我々は、脳内通信機構の解明を神経回路ベースで進めており、当初はループ回路が生成するM系列などの疑似ランダム系列が、記憶(ループ回路)と、通信のための符号(疑似ランダム系列)の役割を同時に担うとの仮説をたてた。上述の仮説に基づき、ratの培養胎児脳から生成した培養神経細胞が発するスパイク列の時系列解析をしたところ、いくつかの局面で予測通り、M系列を中心とする疑似ランダム系列が偶発的より有意に発生することが発見され、脳内記憶ループ回路と通信符号構成の可能性が示唆された。ここで、脳内記憶ループ回路について、当初は1ニューロンが1論理素子に相当すると考えていた。しかしニューロンの発火の原理を考慮すると、単一ニューロンが論理素子として機能するとは考えられず、同期発火している複数のニューロングループが論理素子の構成に関わっているとの新たな見解が生じた。この見解に基づく回路モデルに関し、理論的、実験的検証(文献調査、シミュレーションなどを含む)のため、研究機関の遅延が生じ、平成23年度中に当該仮説の実証が困難となったため、平成24年度への費用の繰り越し申請を行った。その後、マルチニューロンによる論理素子回路モデルを提案し、その実証を進めてきた。その結果、複数のニューロンの発火により、シーケンスパターンが構成され、これが通信制御に使われている可能性を発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々はtime-shift図法を開発し,頭表脳波・皮質脳波,MEGからの脳波伝播解析を世界に先駆けて行った.そこでは,様々な情報が同時並行的に脳内各部に順次伝達される状態が可視化された.そこで我々は,脳構成論の立場から,記憶の基本はループ回路であり,このような経路の探索・形成がHebb則に従う神経回路で可能であり,記憶銘記,連想,抽象化,記憶の再構成など脳情報処理の基本機能が,単純な経路形成のみで統一的に説明され,生理的・神経回路的に実現可能であることを示す研究を進めている.これらのシミュレーション的実証については,平成21-23年度挑戦的萌芽研究「脳の自己組織化:記憶・連想・抽象化のループ回路的実現」において,ループ回路へのバックプロパゲーション学習の適用などを行った結果,time-shift図を説明できるような通信機能の自己組織化が物理的に実現可能であることが分かった.本研究ではこれらの仮説実証のための生理学的実験を行い,理論と実験の両方からの仮説検証を目指している. これまでにラット皮質(視覚第一野)および培養神経細胞につき,マルチチャネル電極を用いて神経スパイク系列を観測した.その結果,培養神経細胞の刺激に対する応答を多数回観測したPSTHの自己相互情報量中にM系列と思われる応答を見い出した.また培養神経細胞のPSTH中並びにラスタープロット中にM系列と見られる応答を見いだした.さらにラットV1野に各種M系列を発見し、それが統計学的に有意であることの検証を行った.その上で,【研究実績の概要】で記した記憶モデルの構築を進めてきた.
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今後の研究の推進方策 |
【研究実績の概要】でも記した通り、我々は、脳内通信機構の解明を神経回路ベースで進めており、当初はループ回路が生成するM系列などの疑似ランダム系列が、記憶(ループ回路)と、通信のための符号(疑似ランダム系列)の役割を同時に担うとの仮説をたてた。上述の仮説に基づき、ratの培養胎児脳から生成した培養神経細胞が発するスパイク列の時系列解析をしたところ、いくつかの局面で予測通り、M系列を中心とする疑似ランダム系列が偶発的より有意に発生することが発見され、脳内記憶ループ回路と通信符号構成の可能性が示唆された。ここで、脳内記憶ループ回路について、当初は1ニューロンが1論理素子に相当すると考えていた。しかしニューロンの発火の原理を考慮すると、単一ニューロンが論理素子として機能するとは考えられず、同期発火している複数のニューロングループが論理素子の構成に関わっているとの新たな見解が生じた。この見解に基づく回路モデルに関し、理論的、実験的検証(文献調査、シミュレーションなどを含む)のため、研究機関の遅延が生じ、費用の繰り越し申請を行った。その後、マルチニューロンによる論理素子回路モデルを提案し、その実証を進めている。今後は、このモデルの実証を目的に、どのような擬似ランダム系列パターンがどのようなタイミングで出現するか、またこれらのパターンの出現に、異なるニューロン間での相関はあるかなどをより詳細に解析するため、、符号同期のメカニズムの解析を視覚的、数理学的に進める。その上で、時間符号化と空間符号化の使い分け・組み合わせ方、ループ学習、外部刺激による学習・同期化・シーケンスのゆらぎへなどの影響についても探究する。
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