研究概要 |
前年までの研究結果(基盤A)に基づき,左右1対の分離型磁気シェルにおいて,シェイキング磁界漏洩のさらなる抑制のためにシェル内アモルファス磁性テープ分布を厳密に左右同構造化と能動補償系に用いるパワーアンプの低雑音化(ハム雑音除去)を最重要課題とした.確保のしやすさから磁性テープを米国製からドイツ製に切り替えた,このためGFRPと一体固化する製作工程が新たな磁性テープ材に問題無く整合するかを検証し,素材の発注・納入,分離型磁気シェルの製作・納入の全行程が年度内で間に合わなくなった.また,パワーアンプからのハム雑音の完全なる抑制に協力メーカ側で予想以上に時間を要し,これも納入が間に合わなかった.このため年度目標は一部未達となったが得られた成果を以下に示す。 1.改良型磁気シールドでは外シェルと内シェルの2重化とした.外シェルでは磁気シェイキングを受ける磁性層をシェル中央部の1層のみとし,RFノイズがSQUIDに干渉するのを防ぐために銅メッシュ層を取り入れた.内シェルは磁気シェイキングをしないパッシブ磁性層のみとして,製作をメーカに依頼した。 2.パワーアンプのハム雑音は電源トランス部分を別筐体として0.5m程度のケーブルで分離することで抑制できることを検証した. 3.非干渉制御系の前段階として高いシールド比を実現しながら磁界勾配の発生を抑制できる過補償の考えを提唱し,旧型シールドに対して過補償制御系を設計製作して評価した.その結果,10μT入射時,シールド中心で最大の遮蔽率(1100)が得られる補償磁界の下では,勾配が0.5nT/cmもあるが,7.5%補償磁界を増加(7.5%過補償)すれば,遮蔽率は250となるが,勾配は0.2nT/cm以下を達成した. 4.磁気ナノ粒子を用いたバイオイメージングのために必要な、高いSN比での計測を可能とする計測手法を開発した。すなわち、磁気マーカーの非線形特性を解明するとともに、この非線形性を利用して励起磁界と信号磁界を周波数帯で分離する新規なイメージング手法を開発した。
|