研究課題
ナノ構造を有する超伝導ストリップライン分子検出器(SSLD)の動作温度である4Kまで、検出器を冷却するために、液体ヘリウムや液体窒素の供給を必要としない機械式のパルスチューブ冷凍器をベースとしたクライオスタットを設計製作した。MALDI-TOF-MS装置のリフレクトロン(静電場でイオンを反射することにより、質量分解能を向上される装置)で反射されたイオンビームの収束位置にSSLDを設置できるように、位置調整可能なコールドフィンガーを製作した(特願2009-206426に基づく)。上記と並行して、SSLDの分子検出特性と動作条件の関係を系統的に調査した。MALDIイオン源で、リゾチーム分子(酵素、14305Da)をイオン化すると主に、1価と2価イオンが生成される。SSLDを動作させるために必要なバイアス電流を変えて、複数のバイアス点で測定したデータを演算することにより、通常の分子検出器では不可能なイオン価数(イオンの運動エネルギー)を識別できることを明らかにした。これにより、従来質量電荷数比(m/zしか測定できなかった質量分析において、イオン価数毎の質量スペクトルを取得可能とした。SSLDの信号読み出しを行うために、超伝導単一磁束量子回路(SFQ)を使ったマルチストップ機能を有する時間-デジタル変換回路(TDC)を設計するとともに、SSLD-とSFQ-TDCを接続する初段部分の基本動作を確認した。SSLDとSFQ-TDC回路を接続し、模擬信号を入力することにより、SSLDからの信号をSFQ信号に変換する初段の基本動作が正常に動作することを確認した。
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