研究概要 |
本研究では,複数の駆動用及び操舵用のモータを最適に制御することにより,電気自動車(EV)の一充電走行距離を飛躍的に伸ばす(130%以上)ことを可能とする制御システムの研究開発を目的としている。さらに代表者が数多くの論文を発表し特許を出願している,モータの高制御性を利用した運動制御技術と有機的に組み合わせ,安全で高効率なEVを開発する。その最適な駆動方式を学術的に明らかにするために,同一車両で様々な駆動方式を公平に比較を行うことが可能な「サブユニット方式」を有する世界唯一のEVを試作する。CO2と車両の不安定性に起因する交通事故を抜本的に減らす制御技術の開発を最終目標とする。 初年度である今年度は,航続距離延長制御システム(RECS)の基礎理論を開発し,シミュレーションによる評価を行った。また試作車の基本設計を行い,基礎実験を開始した。より具体的には,3種類の航続距離延長制御法を開発した。 第一に複数の特性の異なるモータに対して,加速(登坂)・減速(降坂)・一定速走行時において,最適に制駆動力を配分する制御法を提案した。一般に電気モータの効率特性は,低速度領域は銅損が,高速度領域は鉄損が支配的であり,加減速時に高トルク領域を,一定速走行時は低トルク領域が使われる。全ての領域で最高効率を得るモータは設計できないため,大出力モータを一台車載する代わりに,街乗り領域で効率が良いモータと,高速道路走行時に効率が良いモータを複数台搭載して,走行条件に応じて最適な配分を行う制御法を研究開発した。 第二に加重変動を考慮した前後輪最適スリップ率配分法を研究した。第三に左右駆動力差によりヨーモーメントを発生することにより,操舵角を減少させ,コーナリング抵抗を最小化する制御法を開発した。
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