研究概要 |
本研究では,複数の駆動用及び操舵用のモータを最適に制御することにより,電気自動車(EV)の一充電走行距離を飛躍的に伸ばす(130%以上)ことを可能とする制御システムの研究開発を目的としている。さらに代表者が数多くの論文を発表し特許を出願している,モータの高制御性を利用した運動制御技術と有機的に組み合わせ,安全で高効率なEVを開発する。その最適な駆動方式を学術的に明らかにするために,同一車両で様々な駆動方式を公平に比較を行うことが可能な「サブユニット方式」を有する世界唯一のEVを試作する。CO2と車両の不安定性に起因する交通事故を抜本的に減らす制御技術の開発を最終目標とする。 初年度は,航続距離延長制御システム(RECS)の基礎理論を開発し,シミュレーションによる評価を行った。また試作車の基本設計を行い,基礎実験を開始した。2年目である該当年度は,車載モータ型と非駆動輪型のサブユニットおよびメインユニットを製作して,最小構成で試作車を走行可能な状態にまで製作を進めた。さらに横力センサ及びアクティブ操舵機構・ステアバイワイヤ機構を製作した。 また,本技術にモータの高応答性を活かした先進安全制御技術を有機的に融合する研究を行った。4輪独立駆動・前後輪独立操舵という構成に対して,この先進安全制御技術を上述の航続距離延長制御システムと組み合わせる先進安全RECS(Advanced Safety RECS : ASRECS)を開発した。さらに試作車の基本構成を完成させ,走行試験を行い,その有効性を実証した。その成果は,航続距離優先時において約1割の一充電走行距離を延長させ,安全性重視時には16%安全余裕を向上させることに成功した。 さらに効率特性の異なる車載モータを前後に一台ずつ搭載した車両に対して,最適駆動力配分を探索する共同研究を企業と行い,18%の航続距離延長にも成功し,その成果は新聞の一面でも報道された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したように,当初の計画通り,試作車の車載モータ型と非駆動輪型のサブユニットおよびメインユニットの際柵が完了し,最小構成で走行可能な状態にまで仕上げ,実験を行う事ができた。それだけではなく,早くも本成果を産業界との共同研究に適用して,大きな成果を収めるなど,当初の計画以上に進展している面もある。 しかしながら,資材提供先の事情による資材等の入手困難のため、試作業者の作業が大幅に遅延し試作車のボディ製作が遅れ,繰越をせざるを得なかった。ボディが完成しなかったので,防水に問題があり,全天候で実験ができる状態にはできなかったが,サブユニット・メインユニットは予定通り完成したので,走行実験は問題なく行えた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,インホイールモータ方式の第二サブユニットなどを製作して,実験車両を完成の域に到達させる。また横力センサ及びアクティブ操舵機構・ステアバイワイヤ機構の制御系開発を完成させる。この車両を用いて,通常走行時は全輪のコーナリング抵抗を最小限に抑えモータのエネルギー効率を最大化する制御を常時行い,緊急時は必要な横滑り角と制駆動力を全輪に与え姿勢制御を行う先進安全RECSの実証試験を行う。
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