研究課題/領域番号 |
22246057
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤本 博志 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (20313033)
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研究分担者 |
堀 洋一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (50165578)
河村 篤男 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80186139)
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研究期間 (年度) |
2010-05-31 – 2014-03-31
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キーワード | 電気自動車 / 制御システム / モータ制御 / 一充電走行距離 / 車両運動制御 / モーションコントロール / パワーエレクトロニクス |
研究概要 |
本研究では,複数の駆動用及び操舵用のモータを最適に制御することにより,電気自動車(EV)の一充電走行距離を飛躍的に伸ばすことを可能とする制御システムの研究開発を目的としている。さらにモータの高制御性を利用した運動制御技術と有機的に組み合わせ,安全で高効率なEVを開発する。その最適な駆動方式を学術的に明らかにするために,同一車両で様々な駆動方式を公平に比較を行うことが可能な「サブユニット方式」を有する世界唯一のEVを試作する。CO2と車両の不安定性起因の交通事故を抜本的に減らす研究を最終目標とする。 昨年度までに,航続距離延長制御システムの基礎理論を開発し,試作車の基本構成を完成させ,実証実験を開始した。今年度は,インホイールモータや車載モータなど機構の異なるサブユニットを複数製作し,それぞれの構成に応じた航続距離延長制御システムを開発した。具体的には,モータの鉄損・銅損,荷重変動によるスリップ率に起因する損失を緻密にモデル化し,最適な効率になる駆動力配分制御則を厳密に解析的に導出し,その実験検証を行った。 また横力センサ及びアクティブ操舵機構の制御系開発を完成させた。通常走行時はコーナリング抵抗を最小限に抑えエネルギー効率を最大化し,緊急時は必要な横滑り角と制駆動力を全輪に与え姿勢制御を行う先進安全RECSの実証試験を行い,安全性と航続距離の両立に成功した。 さらに,車載モータ方式においては,ドライブシャフトの機構共振といった,理想的なインホイールモータ駆動車では起こり得なかった問題が存在した。そこで今年度は,実社会でもより実用化が進んでいる車載モータ方式を,理想的な駆動系に近づけるために,振動を抑制しながらも駆動力を直接制御することができる画期的な制御系を開発した。その手法は,スリップ率や路面状態により機構共振周波数が変動する問題点を,ロバストな推定技術により克服した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上述したように,当初の計画通り,インホイールモータや車載モータなど機構の異なるサブユニットを複数製作し,実験検証を行った。それだけではなく,早くも本成果を複数の企業との共同研究に適用して,大きな成果を収めるなど,当初の計画以上に進展している。 また,インホイールモータはエネルギー効率においても運動制御面でも大きな利点を有するが,サスペンションの下に重いモータを搭載する必要があるので,路面凹凸入力に対して乗り心地と接地性が悪化する可能性があるとされている。この問題に対して,サスペンションの構造を利用して垂直方向の力を発生できる,インホイールモータ駆動特有の利点をいかしたアクティブ姿勢制御技術を開発した。この実証において,左右独立型車載ユニットのサスペンションの瞬間回転中心を自在に変更することができる画期的な機構を開発することができた。この成果により,アクティブサスペンションなどといった特別な機構を必要とせずに,インホイールモータにより上下力を自由に制御することを可能にした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本研究の総まとめとして,開発した航続距離延長制御法において,インバータ損失,モータの鉄損・銅損,スリップ率に起因する損失といった,より詳細な損失分離を行い,さらなる性能向上を目指す。また電気自動車ならではの自動運転のために,航続距離を最大化することができる,速度や姿勢角度の軌道最適化設計を行う。産業界のみならず,国の研究機関とも協力をして,航続距離延長制御の総合評価を行い,研究をまとめる。
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