研究課題
本研究の目的は、時間とともに劣化していく既存のコンクリート構造物を、維持管理し、長期にわたり供用していくための総合的な技術を構築することにある。公共事業費の大幅な増加が望めない昨今の風潮を考えると、新設構造物に対する過度の期待は非現実的であり、このため既存構造物の長寿命化は必要で欠くことのできない対応策である。長寿命化に向けた総合化技術を構築し、提示することにより、これからのわが国の社会基盤施設の整備に貢献していく。本研究では、既存コンクリート構造物の長寿命化に向けた総合化技術を構築することを目指す。この総合化技術は、3つの要素技術から構成される。すなわち、(1)既存コンクリート構造物を構成する材料に関する劣化診断技術、(2)劣化したコンクリート構造物の残存耐荷力の評価技術、(3)新しい材料を用いた各種の補修・補強技術の開発、である。これらの要素技術を結集し、統合して、最終的に社会基盤施設の維持管理や整備のための実用的で有用な方策を提案していく。22年度は上記の3つの要素技術のうち、(1)の既存コンクリート構造物を構成する材料に関する劣化診断技術について、重点的に取り組んだ。従来の劣化診断は、データベースに基づく統計的な診断や、目視による評価が主体であった。具体的には、ひび割れやかぶりコンクリートの剥落、鉄筋腐食状況などの目視検査に加え、打音検査や超音波などを用いた非破壊検査が実施されていた。本研究では、(1)画像解析や画像処理による表面ひび割れの評価と、(2)自然電位法による鋼材の腐食損傷度予測を組合せ、迅速・正確で、客観的な劣化診断を可能とすることに取り組んだ。また画像解析によるひび割れ損傷度評価や、自然電位法による腐食損傷度予測を高精度化するため、コンクリートコアを採取して圧縮強度や塩化物イオン含有量を測定し、また鉄筋腐食についてはコンクリート中からはつり出した鉄筋から、直接、断面欠損量を評価することを試みた。その際には、非破壊検査技術であるAE法の併用も試みた。
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コンクリート工学年次論文集
巻: Vol.32,No.1 ページ: 1739-1744
巻: Vol.32, No.1 ページ: 1739-1744
巻: Vol.32, No.2 ページ: 217-222
巻: Vol.32, No.2 ページ: 661-666
巻: Vol.32, No.2 ページ: 1507-1512
Journal of Construction and Building Materials
巻: Vol.32, No.12 ページ: 2369-2375