研究概要 |
著者らは,石礫・砂礫河川の洪水中の流れと土砂動態・河床変動を精度よく見積もるために,渦度方程式を用いた準三次元洪水流解析法と,河床表層の大きな石礫による凹凸分布を考慮した二次元河床変動解析法を,室内実験及び常願寺川現地実験のデータをもとに構築した。本年度は,実河川における洪水中の流れと河床変動について各解析法を用いた検討を行い,その有効性について検討した。 多くの河川横断構造物を有する多摩川は,洪水中の砂州移動とともに構造物周辺で局所的な河床洗掘が生じ,構造物の被災が生じている。洪水中の砂州の移動・変形と,河川横断構造物周辺の局所洗掘の関係を明らかにすることは,構造物の被災予防の対策を検討する上で重要である。著者らは,多摩川の砂州移動に伴う構造物周辺の局所洗掘の発達過程を解明するため,二ヶ領宿河原堰と二ヶ領上河原堰周辺を対象として準三次元洪水流-河床変動解析法を用いた検討を実施した。H19年9月洪水データを対象として検討した結果,洪水中の砂州移動に伴う構造物周辺の局所洗掘位置の移動,変形を精度よく再現できることが明らかとなった。 新宮川水系旭川では,旭ダム貯水池の堆砂,ダム下流河道の砂州の縮小及び瀬と淵の減少といった問題が顕著になったため,平成10年に排砂バイパストンネルが設置された。排砂バイパストンネルにより多くの石礫が下流河道に排出されるようになり,下流河道の瀬と淵が徐々に回復してきている.旭川の洪水流と河床変動を説明できるモデルを構築することは,今後,排砂施設を検討する上で重要である。本研究では,石礫河川の二次元河床変動解析法を,旭川に適用し,排砂バイパストンネルから排出される石礫の排出機構及び下流河道の瀬淵の回復過程について検討した.その結果,石礫の排出過程と排出される量や質を明らかにするとともに,下流河道の瀬淵と河床材料分布の回復過程を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構築した解析法により,上流の石礫河川から下流の砂礫河川までの流れと河床変動について,実河川の多くのデータを用いた検討から,概ね現象を捉えられることが明らかとなった,特にこれまで十分な精度が得られなかった,構造物周辺の局所洗掘についても,現象を十分に再現できるレベルまで達している。
|
今後の研究の推進方策 |
常願寺川などの石礫河川では、コンクリート護岸の設置により,護岸際に接する水流による流路延長が経年的に延伸し,また深掘れの発達による高水敷と河岸際流路との比高差の増大、砂州の縮小が明らかになり,河岸侵食が堤防まで到達する危険性が高まっている.これに対し、巨石付き砂州を用いた対策が、有効であることが明らかとなり、巨石付き盛土砂州による河岸防護工の設計法の確立が必要となる。 本研究では、はじめに、河岸際の洗掘危険箇所の推定技術を確立するため,石礫河川の河床変動解析法を応用した解析法の検討を行う。次に,河岸際の危険な洗掘を防止するために,巨石付き盛土砂州を活かした河岸防護工について,現地施工モニタリングと河床変動解析法を用いた検討から,どのような位置にどの程度の規模で設置するのが望ましいかについて検討し、巨石付き盛土砂州を用いた河道設計法について確立する。
|