研究課題
本研究は微生物の持つ有機物一時貯蔵能力を活用しての下水処理におけるエネルギー効率の改善という実用的な側面と、その基礎となる微生物群集の把握とモデル化という基礎的な側面の二つに取り組んでいる。応用の方面として、A)FAREWELプロセス、B)電力消費シフト、C)下水管内処理、また、これらを支える基礎面での検討として、D)微生物群集構造の評価、E)数値モデルの開発、を検討している。これらのうちE)は最終年度に再度取り組むとして、A)〜D)の検討を行った。A)については、余剰活性汚泥の細胞内に蓄積されているPHAの分解機構について検討を行った。特に30℃では2、3日安定に保持され、その後突然分解が加速された。酵素の誘導ということも考えられるが、エネルギー生成と結びついた代謝に関連しているとも考えられる。B)については一日6サイクルで運転している回分式活性汚泥プロセスについて、そのうち1サイクルの曝気を削減し、そのかわり、その次、あるいは数サイクル後に曝気を持ち越すような運転法について検討をした。曝気を持ち越すにあたっては、酸素利用速度を監視し、それに基づいて酸素供給を制御した。C)については薄板を複数枚間隔をあけて配したリアクターを作成し、間欠的に下水を満たしたり空にして、間欠酸化による下水処理の可能性について検討し、単位面積あたりの浄化能力を把握した。D)については、上清中のrRNAを測定する手法を開発した。バクテリオファージによる溶菌や捕食によって細胞が破壊された際に放出されるrRNAを捉えることができるようになり、捕食圧を受けている細菌種を特定する手がかりとなると期待している。回分式活性汚泥プロセスの一サイクル内での挙動を仔細に調べたところ、特定の種のrRNAのみがサイクル内で有意に増加することを確認できた。
2: おおむね順調に進展している
モデル化については多少遅れている面があるが、FAREWELプロセスや電力消費シフトについては概ねモデル化のために必要なデータが得られている。また、モデル化のもっと基礎の部分となる微生物群集の挙動については、高速シークエンシング法を用いてこれまで想像もつかなかったようなことが見えてきつつある。全体としてみると、②に区分できると考えられる。
今後、これまでのようなデータ収集を継続しつつも、モデル化に軸足を移し、平成25年度末には研究を総括できるよう、進めていく。
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http://www.mwm.k.u-tokyo.ac.jp:8080/Plone