研究課題/領域番号 |
22246072
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
林 康裕 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70324704)
|
研究分担者 |
森 拓郎 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (00335225)
大西 良広 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00450916)
多幾山 法子 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10565534)
川瀬 博 京都大学, 防災研究所, 教授 (30311856)
腰原 幹雄 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (50334321)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 室内実験 / 環境負荷 / 劣化 / 木造住宅 / 耐震性評価 |
研究概要 |
A. 残存性能の診断と評価(担当:室内実験(多幾山、守、林)、現地調査(腰原、林)) <室内実験>: H22-23年と同様に、既存住宅の完全非破壊劣化診断や解体住宅の劣化診断を行った。劣化診断や材料試験の結果を反映した2次元非線形骨組解析を実施して劣化の影響を分析し、劣化診断結果を反映可能な残存性能評価法(耐震診断法)の構築を目指した検討を行った。 <既存住宅調査>:東南海地震の想定被災地で大きな震動被害が予測される三重県亀山市関町の既存木造住宅10棟について、構造詳細調査・劣化診断・耐震診断などを行ってデータベース化した。また、和歌山県湯浅町で、昨年度実施した住宅調査の結果について、行政と住民を対象とした調査報告会を実施した。 B. 性能制御法の開発(担当:大西、林、多幾山) 骨組を構成した解体試験体や劣化試験体を用いて、(1)大地震時を想定した載荷(最大層間変形角R=0.1程度を目安)を行った後、(2)損傷部を応急復旧し、最大余震を想定して載荷(R=0.07程度を目安)を行う。その後、本格的な補強・補修を行い、(3)別の大地震を想定して完全に耐力を喪失するまで載荷を行う。H24年度は、2層2構面の新規試験体を作成し、パルス性地振動を入力とした振動台実験を行った。試験体は、通し柱試験体と梁通し試験体で、乾式パネルが左右非対称に設置した。大変形時の柱脚浮上りと滑り挙動、1層の乾式パネルが存在しない時の第1層への変形集中特性、損傷後に1層に乾式パネルを設置して補修した際の挙動などについて調べた。 C. 目標性能の評価(担当:川瀬、田村、林) 平成24年度は、地震活動の時間変化と木造住宅の残存耐用年数予測に基づいて、性能制御法の費用対効果や環境負荷低減効果を確率論的に概算評価可能な目標性能評価式を構築した。そして、被災した住宅の継続使用性や修復可能性の評価法について検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
残存性能評価法としては、完全非破壊の劣化診断法と住宅の耐震診断法について、予定どおりの手法が提示でき、概ね順調な成果が上がっていると考えている。調査や実験による検証・実験データの蓄積も順調に進んでいる。 性能制御法については、当初予定した実験内容と異なっている部分もあるが、H25年度に配当されている予算が十分でなかったため、申請時点で計画していた振動台実験を前倒ししてH24年度に実施したため、むしろ全体計画としては進んでいる。日本全国の調査についても、予定どおり調査を実施しており、貴重なデータが蓄積されている。 目標性能の評価についても、H22~H23年度において、計画を上回る速さで目標性能指標について提示することができ、順調に計画は進んでいると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
[残存性能評価法]として、H24年に引き、実用的な耐久性診断法と劣化診断法を提案する。特に、超音波や応力波を利用した、完全非破壊の診断法を完成する。また、同法は既存建物のヤング係数や曲げ強度の同定も可能であることから、全国各地に現存する伝統的木造住宅を対象とした使用材料の統計的比較調査とデータベース化を行う。 [性能制御法の開発]として、H24年までに開発した性能制御法を組合せて使用した性能制御法の効果を2層構面試験体で確認する。使用試験体としては、前年度に振動台実験を行った2層2構面の試験体を対象として、一部補修を行った通し柱を有する試験体を利用して、静的加力実験を行う。実験内容としては、補修した通し柱試験体の終局状態の把握と、限界変形性能や破壊性状を改善するための性能制御法を適用し、その有効性を確認する。そ の後、2次元線材解析モデルと簡易な設計法(限界耐力計算)の2種類の計算法を適用し、性能制御法の効果が検証できることを確認する。これにより、性能制御法の実務での利用が可能となると考えている。 [目標性能の評価]として、既存住宅調査を行った石川県、新潟県、京都府(京都市、美山、伊根)、和歌山県湯浅町、三重県亀山市関町などに加えて、これまで調査済みの高知県、三重県、大阪府、山口県、宮城県、長野県などの住宅を対象として、統計的な観点から検討を行う。まず、これまでの既存住宅調査データを比較することで、全国の地域型木造住宅の構造特性の地域性について分析を行う。そして、地震危険度の違いや木造住宅の構造的特性や劣化状況を踏まえて、予想される損失額や環境負荷を評価し、各地の耐震補強の目標性能と補強法の違いについて比較検討を行うとともに、地域に適した性能制御法について検討し、提言を行う。
|