研究課題
まず、これまでの研究過程で除外してきたデータベースのサンプルを、原本の再確認や建物所有者へのヒアリングを通じて改めて精査してデータベースの拡充を行った。また、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震に起因する電力不足への民生業務用建築物の対応に関する実態調査が実施され、新たにデータベースに追加されたことから、2011年夏季の節電実態に関する分析も実施した。新たに追加されたデータは全国の6,233の建築に関するデータである。節電という観点から契約電力の削減率(2010年比)を見ると、削減率が最も大きいのは、関東の小・中学校の16%、次いで関東の官公庁と東北のデパート・スーパーの13%、関東の福祉施設と東北の劇場・ホールの12%である。同用途で比較すると、事務所では東北の削減率が最も大きく10%、次いで北信越と関東の9%であり、東北・東京電力管内の地域において削減率が大きい。電力使用制限令の対象外の500kW未満も含む平均でみると、いずれの用途でも15%削減にはいたっていないことがわかる。一次エネルギーの削減率で見ると、事務所では東北と関東での削減率が最も大きく19%、次いで北信越と関西の13%であった。比較的節電意識が低かったとされる関西でも9月時点ではほぼ関東と同様の削減率となっている。官公庁では関東の26%が突出して削減率が大きく、次いで東北と北信越の14%である。関西の官公庁の削減率は10%と民間の事務所を下回っていた。これらの成果は東京(12/14)と大阪(1/18)にてシンポジウムを開催し、研究者や実務者、自治体関係者などと共有をはかった。
1: 当初の計画以上に進展している
データベースの精査、ベンチマーク作成のための分析はほぼ予定通り終了し順調に進展している。また計画の見直しを行い、2011年度に予定していた各建物への戸別訪問調査を成果が小さいと判断して中止し、代わりに東日本大震災後の節電対応に関する調査データを併せて分析することにより、非住宅建築物の省エネルギー・節電対策実施状況の把握を行った。これにより当初予定よりユニークなデータベースに基づく分析が可能になり、地域差など有意な結果が得られており計画以上に進展していると判断した。
データベースの利用者は、東日本大震災後の節電要請を受け大幅に増加し、ダウンロード数は1000を超えナショナルデータベースとして機能し始めている。まずこれら利用者に対するアンケート調査を通じ、データベースの利用実態、問題点を把握し改善のための基礎資料とする。最終的にはこれらの結果および前年までの成果をまとめ、非住宅建築物における省エネルギー対策推進の政策提言を行う。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (36件)
日本建築学会環境系論文集
巻: vol.77 ページ: 203-211
巻: Vol.76 ページ: 1109-1117