研究概要 |
ビスマス系超伝導体((Bi,Pb)_2Sr_2Ca_2Cu_3O_x、以下Bi,Pb-2223と記す。)について、そのポテンシャルを明示するために、Pbを含有した単一相の薄膜作製に挑んでいる。平成22年度は、DCスパッタ装置を用いてPbを含まずに作製した配向組織Bi-2223膜に、Pb雰囲気中での熱処理を行うことでPbを注入してBi,Pb-2223膜を作製する方法に取り組み、非常に良質な薄膜が再現性良く作製できるようになった。真空漕内を0.3Torr酸素雰囲気に保ち、約700℃の基板加熱温度でSTO(100)基板上にスパッタ蒸着を行い、成膜を行ったところ、得られた薄膜からは弱いながらもBi2223相のピークを観察することができた。このときの薄膜の超伝導転移温度(Tc)を測定すると72Kであった。しかしながら、この膜中にはターゲットには多量に含まれていたPbが含まれていないことがわかった。条件を振った中では、スパッタ蒸着だけでPbが薄膜中に入ることはなかった。そこで、結晶性の向上およびPbの導入を行うために、Pbを含まない薄膜を、Bi,Pb2223組成の焼結体中で熱処理(Pb雰囲気焼鈍)することを試みた。Pb雰囲気焼鈍を行った薄膜を分析したところ、Pbを含有しており、かつ、c軸配向したBi2223単相が得られていることがわかった。その薄膜の超伝導特性を測定したところ、Tcが105Kであることがわかった。さらに臨界電流測定を液体窒素で行ったところ、33万A/cm2に達していることがわかった。これらの薄膜の表面では、溶融したような形態が観察されるとともに、所々に異物あるいは異相と見られる突起物も観察され、完全に配向しているわけではなかった。
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