結晶性固体材料の破壊物性研究を革新する鍵は,亀裂とその先端近傍のメゾスケール空間に広がった応力集中影響領域での結晶格子欠陥(特に転位)集団構造を高精度に可視化し,それをモデル化することにある.当研究では高い電子線透過能と分解能を兼備した分光結像-超高圧透過電子顕微鏡法にトモグラフィーを融合し,従来域を超えた厚さ5ミクロン以上のnear-bulk試片中の三次元TEM結晶構造解析に挑んだ.更に,離散的転位動力学シミュレーションとそれに必要な力学パラメータ取得のための材料試験に取り組み,巨視的破壊靭性値の物理的意味を,亀裂-転位間相互作用という微視的観点から理解するマイクロ・フラクチャーメカニクスの確率・発展を図った. 本年度は昨年度に引き続きJEOL-1300NEFおよび高傾斜回転ホルダーを用いた超高圧電子線トモグラフィーを行った.さらに,BDT挙動を律速する転位の移動速度を定量的に測定するため,本年度は1.1mass%窒素を含む高窒素鋼オーステナイト中にCuを添加した試料のBDT温度の変形速度依存性を求めた.温度を液体窒素温度から室温まで変化させてBDT温度を求めた.更に引張試験により活性化体積の温度依存性を測定し,Cu添加による転位運動素過程の変化を明らかにした.
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