研究課題/領域番号 |
22246093
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳本 潤 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90220194)
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研究分担者 |
杉山 澄雄 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (90242122)
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キーワード | 板成形 / スプリングバック / 高温成形 / 軽量構造 / 接合 / 成形性向上 / 炭素繊維強化複合材料 |
研究概要 |
超軽量薄肉構造体は、輸送用機器・建築構造・熱交換デバイス等への幅広い適用でエネルギー利用効率向上など様々なメリットが得られることから、その研究は社会的価値が高く、今後長期間にわたり意義を持ち続けると考えられる。構造体部材には高比強度材料が使用されるが、大きな弾性回復量や残留応力に伴う変形により、金型を除去した成形加工後に目的形状へ成形できない不良であるスプリングバックが著しく発生し、その解消は現在でも課題である。スプリングバックには温度依存性があり、鋼板の場合には500℃程度までの温間温度域が有効であるとされている。また高比強度材料は結果として延性が低く難加工であるため、温間加工等を利用することが有効である。本研究の目的は、高比強度材料の高温精密スプリングバックフリー成形による、超軽量薄肉構造の実現であり、2年度目にあたる本年度は、(1)高比強度材料の高温成形による成形性の基礎データの取得、(2)長繊維強化複合材料(CFRP)薄板の新たな成形方案の検討、(3)成形性に優れたCFRP薄板を創製するための評価手法の検討、(4)超軽量構造体を実現するために必須のCFRP-金属接合技術の基礎検討、の4つの項目について研究を行った。これらの実験には、H23年度計画に従い導入した循環冷却装置と、フリーモーション制御による成形が可能なデジタルサーボプレスを活用した。 (1)としては、ステンレス鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、耐熱合金板の冷間・温間V曲げ試験を行い、データを系統的に整理した。(2)では新たに、ダミー薄板でCFRP薄板をはさみ成形する「サンドイッチ成形」を考案した。この成形法によれば、熱硬化性エポキシを基材とするCFRP薄板を室温~100℃で成形することが可能で、このことは、導入したデジタルサーボプレスによる300mm長さの長尺V曲げ試験や、同じく導入した循環冷却装置を利用しつつ熱間加工試験装置で行った絞り成形試験で明らかになっている。この成果はCFRPの高速大量生産に道を開く成果であると考え、権利化すべくH23年度内に2件の特許として出願した。(3)については引張り曲げ試験を考案し、この結果より室温~100℃での成形に最適なCFRP薄板の最適構造を探索する可能性を示した。(4)については、金属とCFRP薄板の、塑性変形を利用したハイブリッド接合について基礎的な検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
金属系薄板については当初の計画通り、様々な材料のスプリングバックを測定し整理している。CFRP薄板の成形については、サンドイッチ成形を考案することで、室温~100℃での成形が可能となった。特許、文献検索によればこれは世界初の成果であって、すでに2件の特許に出願している。また生産科学分野で最も権威があるCIRP論文に投稿し、高い関心のもとにAcceptされている。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度は、本年度得られた成果をもとに、CFRPに重点を移しつつ、成形方法の研究、成形に最適なCFRPマクロ構造の研究、CFRP-金属薄板ハイブリッド接合の研究を引き続き行い、成果を権利化し、また公表していく予定にしている。
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