研究課題/領域番号 |
22246095
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 学 大阪大学, 接合科学研究所, 教授 (20243272)
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研究分担者 |
田代 真一 大阪大学, 接合科学研究所, 助教 (70432424)
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キーワード | 可視化 / 計測工学 / プラズマ工学 / シミュレーション工学 / 溶接 / アーク / フューム / 金属蒸気 |
研究概要 |
ものづくりに必須の基盤技術でありながら、未だ「巧みの世界」と言われるアーク溶接技術を科学に立脚した技術に発展させるため、(1)アーク溶接プロセスで生じるプラズマ中の金属蒸気の元素分離とそれに伴う金属クラスター微粒子の生成過程を実験的に把握するとともに、(2)アーク溶接プロセスの総合的な数値計算シミュレーションを実施し、(3)実験結果と比較検討することにより、金属蒸気の元素分離ダイナミクスと金属微粒子の生成過程メカニズムを明らかにし、それらが溶融プール形成に及ぼす影響について定量的に明らかにすることを目的とする。 平成23年度は、平成22年度に構築した「高感度・高速度アークプラズマ診断システム」を用いて、GTA(ガスタングステンアーク)を熱源とした理想的な一次元流れ場における鉄微粒子生成の可視化を行い、粒子生成の数値計算シミュレーションの結果と比較することにより、取り扱う物理現象のモデル化の妥当性を確認した。具体的には、金属蒸気の量と種類を変化させるとともに、GTAの電流をパラメータ化することにより一次元流れ場を変化させ、核生成する金属蒸気圧や冷却速度を変化させることに成功した。その結果、金属蒸気圧が高くなるほど生成する金属微粒子径が増大し、一方、冷却速度が増加するほど生成する金属微粒子径が低下することが実験的に明らかになった。これらの定量的な実験結果と同じ入力条件で粒子生成の数値計算シミュレーションを行った結果、双方ともよい一致を示した。以上のことから、本研究で取り扱う物理現象のモデル化の妥当性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「高感度・高速度アークプラズマ診断システム」の可視化技術の構築により、静止GTA溶接における金属蒸気挙動の可視化については前倒しで平成22年度に達成済みである。平成23年度は、理想的な一次元流れ場における鉄微粒子生成の可視化を行い、粒子生成の数値計算シミュレーションの結果と比較することにより、取り扱う物理現象のモデル化の妥当性を確認し、当初の計画以上に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成22年度と平成23年度の成果を引き継ぎ、特に本研究課題で構築した「高感度・高速度アークプラズマ診断システム」の可視化技術と数値計算シミュレーション技術を最大限活用して、ヘリウムGTAを金属平板上で発生させ、金属蒸気の線スペクトルの2次元強度分布の時間変化を可視化するとともに、同時に、金属微粒子の生成過程を可視化する。加えて、溶融プール形成過程を把握する目的で、決められた時間ごとでアークを消弧し、その都度、溶融部中央断面を研磨し、溶融プール形状を測定する。本研究において得られた実験と計算の双方による成果を総合的に比較検討することにより、当初の目的であるGTA溶接プロセスにおけるプラズマ中の金属蒸気の元素分離ダイナミクスと金属微粒子の生成過程メカニズムを明らかにし、本研究を総括する。
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