研究課題
アルミニウムスクラップの高度リサイクルの実現のために、溶融スクラップ中の不純物および非金属介在物を分離除去できる電磁サイクロン法について検討した。本年度は、(1)液体サイクロンに電磁分離機能を組み合わせた電磁サイクロンの性能評価と、(2)溶融Al中不純物成分の金属間化合物化とその電磁分離特性の検討を主に行い、下記の成果を得た。(1)の研究では、平成22年度に製作した電磁サイクロンの水モデル装置を用いて粒子の分離特性を調査した。まず装置内の流動特性をPW法によって測定し、それを熱流体解析ソフトのFLUENTによる計算結果と比較し、両者の一致を確認した。次にマンガンフェライト粒子(磁性体)を擬似介在物として、電磁サイクロンによる分離特性を調査した。なお、水モデル実験では電磁力(ローレンツ力)をマグネットシートによる磁気力で置き換えた。実験は液流量15~30L/minの条件で行ったが、粒子分離効率は磁気分離の併用によって最大2倍向上した。これより溶融Al中のAl2O3粒子の分離効率を推算すると、液流量15L/minにおいて電磁分離の併用により30%向上することが分かった。これらの結果に基づいて、日本軽金属(株)と共同で溶融Alを対象とした電磁サイクロンを設計・試作するとともに、本法の特許出願を準備している。(2)の研究では、溶融Al中の不純物として最も一般的なFeを選び、Alに3~8mass%のFeを添加して、所定温度でAl-Fe金属間化合物の晶出状況を調べた。熱力学ソフト・サーモカルクにより、晶出物がAl3Feであることを確認し、その晶出量を求めた。次にこの合金を周波数30kHzの高周波誘導炉内に種々の時間静置して電磁分離状況を観察したところ、壁面付近には100μmを超える粒子が集積しており、内部には微細な針状の粒子が残留した。次年度には種々の金属間化合物について電磁分離性を調査する。
2: おおむね順調に進展している
当初予定では、前記の研究実績の概要に記した(1)および(2)に加えて、平成22年度の繰越研究である、せん断乱流生成装置の製作と模擬介在物粒子(ガラス球)にかかる流体力の解析を実施した。これらの研究は平成23年度内にすべて完了することができた。
平成24年度には(1)電磁分離装置付き液体サイクロンの実証試験、(2)金属間化合物の晶出・電磁分離による溶融Alの精製、(3)研究成果に基づく国際ワークショップの開催、を実施予定である。(1)については、共同研究先の日本軽金属(株)蒲原工場にて、Al鋳造機の隣接位置に電磁サイクロン装置を設置し、各種介在物(Al2O3や金属間化合物)の分離性能を調査・検討する。(2)については、平成23年度に調査対象としたFeとAlとの間の金属間化合物について調査を継続するとともに、AlとCuやMnとの間の金属間化合物についても電磁分離特性を調べたい。
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6th International Symposium on Advanced, Science and Technology in Experimental Mechanics, 3-5 Nov., 2011, Osaka, Japan
巻: 24(Plenary Lecture) ページ: 23-28
10th International Conference in Eco-materials (ICEM2011), Nov.21-24, 2011, Shanghai, China
巻: (Keynote Lecture) ページ: 87-93