本年度は最終年度にあたるため、これまで2年間の成果に基づいて、効率的にバイオマス中のセルロース、リグニンの成分分離を行う方法、成分分離したリグニン、セルロースから有用化学物質を選択的に製造する新規変換法の最適条件を明確にし、バイオマスから各種化学製品を製造するバイオマスリファイナリーフローを提示することを目的に種々検討し、以下の成果を得た。 まず、リグノセルロース系バイオマスの成分分離法として、これまでとは全く発想の異なる直接酸糖化法を提案した。本法はこれまでの脱リグニンというスキームとは真逆な発想で、木質バイオマス中のセルロースをバイオマス中で酸糖化しオリゴ糖として液状で取り出し、リグニンは固体のまま残存させるというものである。種々の有機酸、温度条件を探索し、10-40%ぎ酸水溶液を150-180℃、高圧下で処理することで、オリゴ糖を50-80%取り出すことに成功し、本法の有用性を示した。 次に、昨年度に引き続きリグニンから選択的にコハク酸などの有用中間化学製品を最大収率にする条件を明確した。一方、リグニン溶液の高圧高温水での低分子化を実施し、得られた低分子リグニンに硬化剤を添加してリグニン樹脂を製造する方法についても検討し、分子量1000以下のリグニンから製造した樹脂は、既往のフェノール系樹脂と強度などの物性が同等であることを見出した。 さらに、初年度に決定された乳酸の酸化によるC3モノマー原料の合成レシピに基づいて、気液マイクロリアクターによる高効率反応システムを構築し、乳酸の純酸素酸化を試み、80℃数分で選択率100%、収率80%以上のピルビン酸を得ることに成功した。これによって、バイオマスからアクリル樹脂原料モノマーを製造する基盤を構築できた。
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