研究概要 |
本研究では,次世代動的風洞実験技術の基盤となる6自由度ロボットマニピュレータの開発に取り組み,その有効性を系統的な風洞試験で評価することを目的とする.また,先進計測技術を利用して高精度の非定常実験データを取得し,非定常CFD計算結果の検証にも寄与することを目指す.このため,ロボティクス,実験空気力学,先進計測,数値流体力学の研究者が連携し研究に取り組んだ.平成22年度は,6自由度ロボットマニピュレータの設計と評価に焦点をおいて研究を行った.マニピュータとしては東北大学が産学国際共同研究で開発した「HEXA型パラレルロボット」と市販の「PA-10型シリアルロボット」の2つの既存形式のロボットの加振性能を評価した.その結果,これらのロボットを用いて,縦方向(ピッチ)と横方向(ローリング)の運動に対して,空気力に非定常性が現れる周波数と振幅範囲での加振が行えることを確認した.ただ,デルタ翼に生じるWing Rockや高迎角におけるDynamic Liftなどのより広範な領域で発生する現象の実験を行うには両者ともパワーが不足し,さらにHEXA型ロボットでは,質量の大きな模型が先端に取り付けられた場合,制御系との錬成による共振が発生することが明らかになった.そのため,6自由度ロボットマニピュレータの設計製作に係わる作業を平成23年度に繰り越し,モーターをパワーアップし支持腕を高剛性化した新型のHEXA型ロボットを完成させた.一方,ロボットの評価と並行して進めていた感圧塗料(PSP)を用いた非定常圧力分布計測については,音響共鳴管を利用して周波数応答を調べる較正装置を開発し高速PSPの周波数特性を評価した.また,高い信号雑音比でのPSP計測を可能にする新しい画像処理技術として「条件付き画像抽出法」を考案し特許の出願を行った.この方法を用いて,カルマン渦によって誘起される角柱まわりの非定常圧力分布を画像として捉えることに成功し,この方法が動的風洞実験に適用可能な技術であることを実証した.
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