研究課題/領域番号 |
22246111
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研究機関 | 独立行政法人海上技術安全研究所 |
研究代表者 |
村上 健児 独立行政法人海上技術安全研究所, 構造系, 上席研究員 (60112067)
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研究分担者 |
丹羽 敏男 独立行政法人海上技術安全研究所, 構造系, グループ長 (10208267)
田中 義久 独立行政法人海上技術安全研究所, 構造系, 主任研究員 (70399517)
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キーワード | 海洋環境 / 鋼構造物 / 防食 / 防汚 / 亜鉛溶射 / 亜鉛-アルミニウム合金 / 皮膜構造 / 密着力 |
研究概要 |
船底に海洋生物が付着して水流抵抗が増加することを防ぐために、防汚塗料が防食塗料と共に船底に塗られる。本研究の目的は、このような塗装に替わり、船底の腐食や生物付着を長期にわたって抑制するための金属溶射による表面処理法を開発することである。 アーク溶射亜鉛皮膜の作製条件を決定するための予備実験を行った。まず、種々の皮膜の厚さを電磁膜厚計、断面観察及びマイクロメータで測定し、いずれもほぼ同じ膜厚値が得られることを明らかにした。以後は電磁膜厚計を使用することとした。次に、目的とする皮膜を作製するために、皮膜厚さ及び気孔率のアーク電流および溶射距離依存性を求めた。 以上の結果及び平成22年度の成果をもとに、基材上に亜鉛をアーク溶射し、後処理を行って次に示す種類の皮膜試料を作製した。(i):気孔率12%で厚さ200μmの皮膜、(ii):(i)の皮膜表面を研磨した皮膜、(iii):(i)の皮膜に封孔処理した後に表面研磨した皮膜、(iv):気孔率12%の皮膜上に気孔率22%の皮膜を重ねた全厚さ260μmの積層皮膜、(v):(iv)の皮膜表面を研磨した皮膜、(vi):(iv)の皮膜に封孔処理した後に表面研磨した皮膜。なお、基材は、80mm×120mm×2mm厚の小型鋼基板、200mm×300mm×2mm厚の大型鋼基板、及び直径76mm×300mm長の円筒鋼基材である。これらの皮膜試料を海中に吊り下げ浸漬し、表面への生物付着や腐食状況を定期的に観察中である。平成23年度に得られた観察結果は次の通りである。いずれの皮膜試料においても、鋼基材の錆発生は見られない。皮膜試料への海洋生物(フジツボ)付着量は封孔処理した皮膜でやや多く、表面を研磨しただけの皮膜では著しく少なかった。太陽光の当たる皮膜面では当たらない面でよりもフジツボ付着量が多い。今後、皮膜を順次回収し、マクロ及びミクロに解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度には主に装置の設置及び研究目的に沿った装置特性の把握を行い、2年目には目的とする皮膜を作製するに必要な条件を求めて種々の皮膜を作り、これらを海中浸漬する計画であったので、2年目の研究は概ね順調に進展している。なお、台風のために、海中浸漬実験場が被害を受け、一部の皮膜試料が流失したが、その影響からはほぼ回復した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、海中浸漬中の皮膜試料の観察を継続して行い、皮膜試料を順次引き上げ・回収して、マクロ及びミクロに解析し、どのような構造の皮膜が優れた防食・防汚効果を持つのか、またその理由を調べる。これと並行して、人工海水中に浸漬した種々の皮膜試料厚さの経時変化を測定し、皮膜寿命を推定すると共に、皮膜の損耗がどのように進行するのかを調べる。
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