研究概要 |
活火山国である本邦は,自然環境で既に土壌環境基準を超える重金属類を含有する地層があるが,これらの地層は天然環境では容易には重金属を溶出しない場合もある.水や大気と異なり,土壌を経口摂取するリスクはきわめて低い.本邦の自然環境の特殊性を勘案し,科学的合理性に基づいた環境基準の策定が不可欠である. 本研究は,多元的な土壌環境基準の策定のための計測・計量方法の考案と,リスク評価手法の技術開発を目的としている.本年度は,世界自然遺産の白神山地(秋田県-青森県),秋田県小坂地域および玉川地域(秋田県)をモデルフィールドにして,河川および河川底質土壌中の重金属の季節変化をとらえた.また,現地でのサンプリング方法を工夫し,フィルタリング(0.2mm,0.45mmおよび500KD 限外ろ過)による水採取に加え,渇水期,雪解け期など季節変化に河川流量を実測した.その結果,全く人為的影響のない白神山地において,地層からの重金属類の溶出モデルとシミュレーターの開発ができ,この結果を基に,人為汚染を含む鉱山地帯での鉱山廃水の河川に対する影響を定量的に評価することが可能となった. また小坂地域においては,最上流部から米代川合流までの間に6箇所の定点観測点を設けて,小坂川本流および定点観測点間に流入する支流の全てについて,重金属量と流量を季節ごとに計測し,河川における重金属溶出,移動モデル構築のための基礎的データの集積を行った.この結果を解析することにより,自然由来と人為由来の重金属量の発生と移動のモデルと評価シミュレーターの開発に結びつけることが可能と考えられる.
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