研究課題/領域番号 |
22246119
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小野 靖 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (30214191)
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研究分担者 |
井 通暁 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (00324799)
清水 敏文 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究本部, 准教授 (60311180)
榊田 創 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 研究員 (90357088)
山田 琢磨 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (90437773)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ベータ限界 / プラズマ合体 / 中性粒子ビーム / 球状トカマク / 磁場反転配位 / 磁気リコネクション / プラズマ加熱 / 圧力駆動型不安定 |
研究概要 |
本年度は、合体加熱と3台の自主開発パルスNBIを駆使して超高ベータ状態を生成・維持し、3種類の開発済2次元計測を駆使して高ベータ状態を維持した。 TS-4はA) ST同士を合体する手法とB) 異極性合体で生成したFRCにトロイダル磁場を印加する手法を最適化して0.3-0.9に達する超高(トロイダル)ベータ状態を作り出し、合計0.6MWのNBIで数十マイクロ秒維持することができた。UTSTは、A)手法を最適化し、加熱パワーを最大化した。ポロイダル磁場が小さいために到達ベータ値がTS-4に及ばなかったが、0.75MWのNBIの入射を行っている。 明らかになった点は、1)合体による高ベータ化が高ベータ不安定の成長よりも速いため、合体生成直後の高ベータSTは安定、不安定のどちらも生成されること、2)B)手法に続き、A)手法でも交換型不安定が抑制される絶対極小磁場配位の生成に成功したこと、3)合体STはq値の上昇と共に合体加熱エネルギーの閉じ込めが向上して、あるq値以上で磁場揺動が急増して不安定化されること、4)高ベータ状態で発生する不安定はトロイダルモード数が8を越え、5)恐らく本来不安定な超高ベータ状態がNBIの高速イオンによって安定化されるため、ベータ値が上がるほどNBIによる配位維持効果が大きく現れることである。 超高ベータFRCやSTがNBIによる安定性向上は2編のNuclear Fusion誌、合体加熱とNBIを組み合わせた超高ベータ実験はIAEA Fusion Energy 2012の日本側代表論文に選ばれた。また、合体によるSTの急速加熱はヨーロッパ物理学会の基調講演とPlasma Phys. Cont. Nucl. Fusionの招待論文に選ばれ、一般科学雑誌「パリティ」の「物理科学、この1年」のプラズマ物理分野の進展として取り上げられるに至っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
TS-4, UTSTともに合体・磁気リコネクションによる急速加熱の最適化を終えて、リコネクションのMWを大きく越える急速加熱効果と磁場の二乗に比例する加熱効果を明らかにし、さらに不安定の成長時間より速く急速加熱を行い、高ベータ配位形成を行なった。東京大学の実験はヨーロッパ物理学会の基調講演とPlasma Phys. Cont. Nucl. Fusionの招待論文に選ばれ、一般科学雑誌「パリティ」の「物理科学、この1年」のプラズマ物理分野の進展として取り上げられるなど、内外より評価されており、期待以上の反響があった。 開発要素であったワッシャーガン型NBIの開発も完了し、計測も108チャンネルに及ぶ2次元ドップラー型イオン温度計測と14点ながら2次元トムソン散乱計測を完成し、これらのデータが上記招待論文やPhys. Rev. Lett.論文となるなど物理解明に大きく貢献している。 これらを用いた超高ベータSTの生成についても、安定なものでベータ値0.5程度、不安定なものの瞬時値ならばFRCとの中間に当たる0.9まで可能になった。B) 異極性合体で生成したFRCにトロイダル磁場を印加する手法に続き、A) ST同士を合体する手法でも、生成プロセスを最適化すると交換型不安定が抑制される絶対極小磁場配位を得ることに成功し、さらに中性粒子ビームを最適な場所に入射すると高ベータになるほど配位の安定性が改善されて配位維持時間の向上が認められるという超高ベータ状態の維持に向けた重要なヒントが得られている。超高ベータSTの生成と安定性向上に向けた展望の順調に得られており、概ね期待以上の成果が上がったといってよいものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
ヨーロッパ物理学会の基調講演等で公表した再結合磁場の二乗に比例する合体・リコネクション加熱を基に、IAEA国際会議で公表した超高ベータ球状トカマクの2種類の合体・リコネクション加熱による生成を、超高ベータ安定性の検証と制御に結びつけることが今後の課題である。特に前年度、高ベータになるほどNBIによる安定化効果が大きく働いて配位維持時間向上につながることがわかったNBIによる配位維持実験を詳細に検証し、超高ベータ配位維持の手法を確立したい。A) STの同極性合体とB) 異極性合体生成FRC へのトロイダル磁場印加の両手法を駆使して、多様なHollownessを有する電流密度・熱圧力分布を形成し、超高ベータSTの安定性を検証する方針である。24年度にはB)手法だけでなく、A)手法でも合体後の絶対極小磁場配位の形成に成功したことから、リコネクション加熱の熱圧力・電流分布制御で絶対極小磁場配位形成を最適化し、超高ベータSTの安定性向上策の検証に結びつける予定である。開発済のパルスNBI群によってそれぞれUTSTとTS-4の追加熱と流速制御を最適化し、超高ベータを維持したSTの安定化を進める。TS-4を中心に、運転の自由度の大きさを生かした安定性向上実験の幅を広げ、I)高ベータ不安定、即ちバルーニング(キンク)、ホロー電流分布による駆動型不安定の危険性を明らかにし、高ベータ不安定の安定化、即ち(a)合体加熱の選択による熱圧力制御、(b)複数NBIによる流速分布制御、(c)導体壁位置の最適化を進める計画である。 研究のまとめとして、7月にIPELS国際会議を主催してリコネクション加熱に関する実験、理論の研究成果を集約する予定である。
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