研究課題/領域番号 |
22246129
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福田 武司 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50354585)
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研究分担者 |
堀池 寛 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20252611)
鈴木 幸子 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20403157)
高田 孝 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40423206)
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研究期間 (年度) |
2010-05-31 – 2014-03-31
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キーワード | 高速増殖炉 / 液体ナトリウム / 速度場計測 / 電磁場制御 / 気液二相流 / 真空紫外分光 / エネルギーカスケード / 大規模渦模擬計算 |
研究概要 |
将来のエネルギー源として高速炉の開発は必須の要件であり、冷却材として想定されている液体ナトリウムの熱流動に関する研究は、最重要項目であると認識されている。而るに大規模な数値計算による解析が現在の主流であり、信頼性の向上を図るには実験的な検証を組み合わせた所謂ハイブリッド流動場解析が必要不可欠である。本研究では、ナトリウム中に真空紫外光を効率的に散乱する追跡元素を添加して、透過光の2次元輝度分布画像を高速CCDカメラで観測することにより、液体ナトリウム内部における流れ場を高精度で可視化することを目的としている。しかしながら、ナトリウムの分光透過率が、ナトリウムの純度に依存して大きく変動することが前年度に分かったので、不純物含有量の少ない試料を新規調達するとともに、波長157nmの励起フッ素分子レーザーの代替として分光用の標準光源を用いた実験を行った。その結果、ナトリウム中構造物の透過画像を取得するのに成功したが、流れ場のフーリエ解析に必要とされる高い分解能を実現(1-2mmの空間分解能を維持したまま数ミリ秒以下で2次元画像を観測)するには至らなかった。厚み20-25mmのナトリウムを対象としてトロイダル形状回折格子型2次元イメージング分光計測装置で追跡元素の誘導放出蛍光波長に注目した画像の取得を試みたが、光源強度が低い事に起因して数値計算結果と比較可能な速度場を再構築できなかった。25年度は、透過率の高い126nm近辺の波長域で強いスペクトル強度が期待できる放電励起光源を用いた実験を実施する計画である。また、流れ場の解析に温度分布の評価が不可欠であることを鑑み、サイクロトロン輻射波の計測を併行して実施した。固体ナトリウムでは増幅度の高いホーン型アンテナを用いても-85dBm以上の有意な信号が得られなかったので、高温の液体ナトリウムを対象としたヘテロダイン検波を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ナトリウムの安全取扱に係わる一般的な制限事項はもとより、真空紫外光に対して90%を越えるナトリウムの分光透過率が(腐食性の高い)ナトリウムの純度劣化により予想を越えて著しく低下することが、高い実験効率の維持を困難にしている。既存の純化設備を改良することによって技術的に解決可能であるが、危険物取扱い施設の改修に係わる変更申請(許可)手続きに要する時間と経費面における負担を鑑み、本研究では原理の検証と理論模型の構築を優先した。一方、真空紫外域における原子分子データは近年整備が進んでいるが、当該波長域における高強度光源の開発は世界的にも未だ研究段階にある。本研究においても24年度に種々の金属標的を用いたレーザープラズマ光源等の開発を試行錯誤的に実施したが、スペクトル強度の面で充分な実用性を得るには至らなかった。この点に関しては、ドイツのベルマーレ社が24年度末に発表した波長126nmの励起アルゴン分子光源(宮崎大学の方式と類似)が有望であり、当該装置の購入または類似した機材を独自に用意することによって飛躍的な研究の進展が見込まれる)。また、ナトリウムのL殻吸収端(50nm)から100nmの波長域では、一段と高いナトリウムの透過率が期待できることから、原子力機構(敦賀)との共同研究枠で検討を進めているが、試験体積全体を数Pa以下に真空排気する必要があり、研究の効率は一段と制限される。さらに、構成機器の約9割が輸入品(主に米国・フランス製)であることから、故障した機材の修復に数ヶ月の期間を要し、前年度と同様に実験研究がしばしば長く中断した。装置開発の時点から既に了解している事項とは云え、革新的な研究開発を支える基盤要素技術(生産規模の小さい高価な特殊先端機器)の多くが国外(欧米)にあり、不具合が発生する度に往復の輸送期間を含め数ヶ月の単位で時間を失う事実は、今後ともに問題として残る。
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今後の研究の推進方策 |
24年度までに得た関連要素技術に関する知見を基に、126nmの励起アルゴン分子光源を用いて1-2mmの空間分解能を維持したまま数ミリ秒以下で2次元画像を観測する手法の開発を進める。研究で用いる液体ナトリウム循環駆動装置は、高純度アルゴンガスを導入して気液二相流を形成する機能を有する他、熱的に絶縁された機械構造物を流路内に挿入できる設計である。また、流路に直交する電磁場の印加によって、流れ場に外部擾乱(カルマン渦の生成や表面波の励起等)を与えることが可能である。平成25年度は、機械的な外部摂動に対する速度場の応答特性や渦の構造形成に係わる動力学的な挙動を詳細に解析し、液体ナトリウム体系における流体エネルギーの散逸過程を明らかにするとともに、大規模渦模擬計算の結果と比較検討することによって、従来の理論模型を検証する作業を継続する。また、渦度の保存性に注目すると共に、旋回流半径の逆数を変数としたスペクトル密度を求め、フーリエ空間における乱流の(逆)カスケード現象に係わる動態を定量的に調べる。さらに、液体ナトリウムが導電性の作動流体であることを鑑みて、外部印加電磁場の下における流れ場の応答を詳細に調べ、電磁場を考慮した大規模渦模擬計算結果との比較検討を実施する。電磁場による流れ場(渦)の構造制御に関しては、液体ナトリウム流路の周囲に配置した2台の電磁コイルと4組の離散高圧電極を用いて(1)直交電磁場の印加に対する速度場(ハルトマン流れ)の応答特性を調べ、数値計算結果との比較検討を行う。また、電磁場を印加する(2)面積(場所)と入力波形の定量的効果を明らかにする。加えて、得られた結果を基に速度場計測画像と電磁場強度(配置)・電磁ポンプ駆動電圧を各々センサー、アクチュエーターとして液体金属中の気泡密度や流れ場(渦)の構造を実時間帰還制御する革新技術の開発を目的とした基礎研究を展開する。
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