研究概要 |
本研究の目的は,太陽光エネルギーの高度利用を念頭においたクリーンMHD発電(エネルギー源はもちろんのこと,作動気体を希ガスとし,従来型のアルカリ金属等のシード剤を一切不要とする)の実現可能性を格段に高め,究極にある「太陽光エネルギー高度利用型MHD発電システム」の構築に向けて研究・開発基盤を確立することにある。 平成22年度(初年度)は,衝撃波管駆動MHD発電実験装置に新たにリニア形状ファラデー型発電機を組み込み,本システムの基本要素である高温希ガスプラズマMHD発電の実証試験を実施し,初期の段階ではあるが,シード剤を用いない高温希ガスプラズマを用いたリニア形状発電機において,有意な発電が可能であることを実験的に示した。 この成果を受けて,本年度(平成23年度)は,更なる性能の向上とその定量的評価,ならびに希ガスプラズマ・電磁流体挙動の解明に重点を置いて研究を遂行した。その結果,希ガス(アルゴン)入口全温度~9,000K,圧力~0.15MPa,磁束密度4Tの下で,MHD発電機の電圧-電流特性を明らかにし,最大発電出力19.6kW,エンタルピー抽出率10.9%,出力密度(4番電極領域)244MW/m^3を達成し,先導研究で実績のあるディスク形状発電機に匹敵し,かつ従前のシードプラズマ発電機と同等以上の発電性能を有することを世界で初めて定量的に実証した。さらに,光学計測によるプラズマの電子温度の評価から,プラズマが非平衡状態にあることやその変動が小さいことが明確となり,本方式の潜在力の高さと学術的意義を進化させることができた。一方,関連して進めている数値シミュレーションでは,未だ改善の余地は残されているものの,定量的に相応しい評価が得られており,実験結果の妥当性を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
9.研究実績の概要で述べたとおり,本研究の本質であるクリーンMHD発電(エネルギー源はもちろんのこと,作動気体を希ガスとし,従来型のアルカリ金属等のシード剤を一切不要とする)の実現可能性を世界に先駆けて実証できる段階に至っており,当初の計画通り,次の研究ステップとなるパルス熱源駆動温希ガスMHD発電実証試験に向けての基盤を確立できたものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は当初の計画通り順調に進展しており,来年度には衝撃波管駆動高温希ガスプラズマMHD発電の有用性に関する第一段階評価を確立するとともに,CO_2パルスレーザーを模擬したパルス放電による高温希ガスMHD発電実証試験の着手と性能向上への指針の明確化を目指して研究を更に進展させる。前者は,初年度,本年度の2年間の成果を更なる研究の積み重ねからより定量的に評価し,本発電方式の潜在力と有用性の確度を高める。一方,後者は,やや萌芽的要素を含み,多少の試行錯誤が予測されるが,原理実証試験や数値シミュレーションの概算から立ち上げ,徐々に確実かつ高性能なMHD発電実証へと研究を展開し,研究目的の達成に至りたい。
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