研究課題
生体は二本鎖切断を入れる酵素とヘテロ二重鎖組換え中間体形成を行うRecA/Rad51族組換え酵素を以て相同組換え開始を制御する。Spo11による二本鎖切断で始まる減数分裂期相同組換えを植物個体で解析するには交配実験が必要で、時間がかかる上に精度が悪い。組換えに働くイネの蛋白質の機能解析のために、遺伝子の一部を、別のDNAの相同配列のコピーで置き換える型(gene conversion)の減数分裂期相同組換えをイネで迅速に精度高く解析する手段を開発した。受け手となる藍色蛍光蛋白質(CFP)を発現している遺伝子と、鋳型となるプロモーターを持たない黄色蛍光蛋白質(YFP)遺伝子をゲノムの異なる部位に組み込んだイネ個体を作り、出穂させて多数の花粉を集め蛍光を解析した。組換えでCFP遺伝子の一部がYFP遺伝子の部分で置き換わると蛍光が紫から黄色に変わる。この方法で減数分裂期では、体細胞で見られる組換えに比べて桁違いに高い頻度で組換えが起こることを示した(Shingu Plant Biotech 2014)。一方、相同DNA組換えにはgene conversionと、染色体部分を交換する交叉がある。減数分裂には必要な交叉だが、体細胞ではヘテロ接合性喪失を伴い有害である。Srs2が、Rad51、PCNAと共同作用することで交叉を抑制する一方、gene conversionだけを起こす組換え機構(SDSA経路)には欠かせないことが分かった。さらに、Srs2のDNAヘリカーゼ活性は、SDSA経路による組換えには必要だが、交叉抑制には不要で、Srs2がRad51に結合するだけで交叉抑制に十分なことが分かった。この結果は、従来のモデルでは説明困難で、DNA修復合成なしの第2端補足という新規の機構を示唆した(Miura PNAS 2013)。さらに、相同組換えとは独立に働き、エラーが多いといわれていたNHEJ(非同性DNA切断端結合)の主要経路ついても研究が進んだ。
1: 当初の計画以上に進展している
相同組換え開始時に、gene conversionへ進むか、交叉に進むかを決める機構を明らかにできた。これは、従来受け入られてきた組換え機構のモデルの改変を迫る成果である。さらに、エラーを伴いがちと言われていたNHEJにも、Rad51とSrs2が働く正確な再結合があることが分かってきた。いずれも、当初の知識では予測できなかった意外な成果で有り、独自の切り口での組換えの自在制御実現に向けた重要な一歩である。
今年度は本課題の最終年度である。そこで、このところ本課題の中で最も成果が上がってきているRecA/Rad51組換え酵素の分子機能・機構とその制御の研究に集中する。(1) 一本鎖DNAへの選択的結合について、RecA/Rad51族組換え酵素内の構造変化が大きい2つのループとDNAの相互作用とその組換え酵素機能での機能、(2) Rad51とSrs2 ヘリカーゼ(二重鎖DNA融解酵素)共同作用の相同組換えでの分子機能の解明のため、DNAヘリカーゼと共通の祖先をもつRecAがATP分解に依存して行う、自身が作ったヘテロ二重鎖解離反応の機構とその生体での相同組換えでの機能の解析を行う。
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Plant Biotechnology
巻: 31 ページ: 55-59
10.5511/plantbiotechnology.13.1121a
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Proc. Natl. Acad. Sci. USA
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