研究課題/領域番号 |
22247003
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 真 京都大学, その他の研究科, 教授 (80204494)
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研究分担者 |
川北 篤 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (80467399)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 絶対送粉共生 / コミカンソウ科 / 菌従属栄養植物 |
研究概要 |
コミカンソウ科の絶対送粉共生系において、琉球列島を中心に、さまざまな系統の植物の上で、共生性/寄生性ハナホソガ類とそこに介在するコマユバチ類の多様性を解明すべく、それらの生活史や生態・行動・系統を調査した。また、野外で植物の開花・結実を追跡し、寄生者が植物の繁殖に与える影響の評価を試みた。コミカンソウ科の果実から羽化してくるコマユバチ類にはホソガ寄生性のものと種子寄生性のものがあり、それらの生態・分類・系統解析を行なった。さらに、コミカンソウ科には、絶対送粉共生性のものとそうでないものがあり、それらの植物の花の匂い分析を行なった。 菌従属栄養植物と菌との関係を明らかにするために、ラン科、ヒナノシャクジョウ科、ホンゴウソウ科などを中心に、系統解析や菌根菌の同定、送粉様式の観察を行なった。菌従属栄養植物の中には、菌根菌に共生するものと、落葉腐朽菌に共生するものがあり、その寄主特異性についても調査した。クロヤツシロランは菌寄生性のショウジョウバエによって送粉されており、菌の子実体の存在がランの送粉効率を高めることが明らかになった。 ハナバチに寄生するネジレバネ類の系統解析と、ネジレバネの寄生がハナバチの行動に与える影響について調査を行なった。ヒメハナバチネジレバネとコハナバチネジレバネがそれぞれ単系統で、後者の寄主特異性が高いことが明らかになった。 カイメンとホウオウガイの住み込み共生について、生態・行動観察を行ない、両者が濾過共生とも言うべき相利共生関係にあることが明らかになった。この共生系に住み込む生物の多様性も明らかにしつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) コミカンソウ科の絶対送粉共生系:コミカンソウ科のさまざまな系統の植物の上で、共生性/寄生性ハナホソガ、およびコマユバチの網羅的な探索を行ない、それらの多様性の解析を進めつつある。また、ハナホソガ類とコマユバチ類の生活史や生態・行動についても、データが集まりつつある。 (2) 菌栄養植物が介在する菌根共生系:ラン科、ヒナノシャクジョウ科、ホンゴウソウ科などの菌従属栄養植物の菌根菌の同定と送粉者の探索が進展した。ランの数種において、菌根菌と送粉者が関わり合う相互作用系の生態学的分析も進めつつある。 (3) ハナバチに寄生するネジレバネが送粉共生系に与える影響:ハナバチネジレバネの多様性と起源、寄主特異性が解明されつつある。また、ハナバチネジレバネがハナバチの行動を操作することが明らかになった。 (4) 海綿と埋在二枚貝の共生系:ホウオウガイは海綿の中に埋もれて生活する二枚貝であるが、両者の間に相利共生の関係があることがわかってきた。この共生系の実態と共生系に入り込む生物の多様性と、それらが共生系に与える影響も明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
(1) コミカンソウ科の絶対送粉共生系:コミカンソウ科のさまざまな系統の植物の上で、共生性/寄生性ハナホソガ、およびコマユバチの分類と系統解析を進める予定である。また、ハナホソガ類とコマユバチ類の生活史や生態・行動についても、データを追加させる必要がある。 (2) 菌栄養植物が介在する菌根共生系:ラン科、ヒナノシャクジョウ科、ホンゴウソウ科などの菌従属栄養植物の菌根菌の同定と送粉者の探索をさらに進める。ランの数種において、さまざまな操作実験を行ない、菌根菌と送粉者が関わり合う相互作用系の生態学的分析をさらに進める必要がある。 (3) ハナバチに寄生するネジレバネが送粉共生系に与える影響:ハナバチネジレバネの系統解析を進め、ハナバチネジレバネの寄主転換や多様化の機構について解析する。また、ハナバチネジレバネが寄主ハナバチの行動をどのように操作するかを明らかにするため、さらに詳細な行動学的検討をする予定である。 (4) 海綿と埋在二枚貝の共生系:ホウオウガイは海綿の住み込み共生について、共生系の実態と共生系に入り込む生物の多様性と、それらが共生系に与える影響の追加調査が必要である。
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