本年度はシロイヌナズナのNDH複合体の構造、電子供与体サブユニット、アッセンブリーに関わる分子シャペロンについて重要な知見を得た。 葉緑体NDH複合体は、Lhca5及びLhca6タンパク質を介して光化学系Iと超複合体を作るが、その過程は、NDH複合体を安定化させるのに重要であることを明らかにした。その機能は、強光下でさらに重要である。 葉緑体NDH複合体の新規サブユニットCRR31、CRRJおよびCRRLを発見した。CRRJはJタンパク質、CRRLはJ-likeタンパク質であり、それぞれ膜貫通ドメインを有する。一方、CRR31はフェレドキシン結合部位を形成する光化学系IのサブユニットであるPsaEと構造が類似しており、NDH複合体のフェレドキシンとの親和性を高める機能があることを明らかにした。NDHはNAD(P)H dehydrogenaseではなく、フェレドキシン依存プラストキノン還元酵素(FQR)であることを提唱した。 CRR6、CRR7はNDH複合体の蓄積に必須なストロマタンパク質であるが、これらがNDHのサブコンプレックスAのアッセンブリーに関わることを明らかにした。またC末に特異的な延長を持つシャペロニンサブユニット様タンパク質Cpn60 β4が、Cpn60複合体のサブユニットであり、NdhHのフォールディングに特異的に必要であることを明らかにした。 ゼニゴケのNDH複合体遺伝子のノックダウンについては、技術的な問題で計画がやや遅れているが、葉緑体遺伝子のノックアウトも考慮に入れて、研究を継続している。
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