研究課題/領域番号 |
22247005
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鹿内 利治 京都大学, 理学研究科, 教授 (70273852)
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キーワード | 葉緑体 / 光合成 / 電子伝達 / NDH / 分子シャペロン / アッセンブリー / コケ植物 / 進化 |
研究概要 |
本年度は、シロイヌナズナのNDH複合体のサブ複合体Aのアセンブリーに関する重要な知見を得て、さらにゼニゴケndhB遺伝子のノックアウト株の作出に成功した。 NDH複合体はチラコイド膜に局在するが、そのサブ複合体Aのアセンブリーはストロマで完了することを明らかにした。またそのアセンブリーに必要な因子であるCRR6、CRR7を含むアセンブリー中間体を精製し、質量分析により、CRR41、CRR42の新規因子を含む複数のアセンブリー因子を同定した。またアセンブリー中間体として、NAI800、NAI500、NAI400を同定し、そこに含まれるタンパク質を同定した。アセンブリーは、この順番で進行し、最後にNdhNが取り込まれ、チラコイド膜でNdhLや他のサブ複合体と相互作用する。NdhH、NdhO、CRR41は、NAI500の成分で、さらなるアセンブリーの足場として機能する。CRR1はNdhKあるいはNdhM、CRR6とHCF101はNdhIのアセンブリーに機能する。 ゼニゴケは陸上植物の進化の中で最も古く分岐し、陸上植物のNDH複合体の進化を探る上で、重要な材料である。ゼニゴケの葉緑体NDHが、シロイヌナズナのものと比較して低分子であり、おそらく光化学系1と超複合体を作らないことを示した。また、葉緑体形質転換技術を用いて、ndhBのノックアウトを行なった。ノックアウト株ではNdhMの蓄積量が激減し、NDH活性に起因するクロロフィル蛍光変化が消失していた。NDH複合体に欠損にも関わらず、ノックアウト株は正常な光合成を示した。この表現型は、被子植物のNDH複合体のノックアウトの表現型に良く似る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
葉緑体NDH複合体のアセンブリーについての重要な知見を得て、未知であったいくつかのアセンブリー因子の機能を特定した。また遅れていたゼニゴケのNDH複合体の逆遺伝学解析に、進捗があった。当初計画をおおむねクリアしていると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
未知のCRR7の機能を解明する。NDH複合体のアセンブリーの律速要因を特定する。またフェレドキシンとの相互作用に関わるNdhSの機能をさらに詳細に行なう。 ゼニゴケndhBノックアウト株の詳細な生理機能解析を行なう。またゼニゴケNDH複合体についての生化学解析を継続する。
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