研究課題/領域番号 |
22247010
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高木 淳一 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (90212000)
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研究分担者 |
岩崎 憲治 大阪大学, 蛋白質研究所, 准教授 (20342751)
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キーワード | リポタンパク質 / 受容体 / 構造生物学 / X線結晶構造解析 / LRP6 / LR11 / reelin |
研究概要 |
これまで「物質の取り込み」という側面だけが強調されていたリボ蛋白質受容体(LR)ファミリー分子が、じつは細胞や組織、個体にとって根源的なシグナル伝達に関わり、脂質代謝とは関係のない様々な疾患にも本質的に関わっていることが明らかになりつつある。このクラスの受容体は、複数のドメインからなるモジュール構造を巧みに使い、リガンド認識という最初のステップに引き続いてドラスティックな構造変化によってシグナルをイニシエーションするという仮説を持っている。本研究では、とくに医学的・生物学的にインパクトの高い3つのLRファミリー分子について構造生物学的手法と細胞生物学的手法を組み合わせて上記の仮説を検証しその詳細を明らかにすることを目的とする。 研究1(reelin受容体系):reelinの受容体結合活性断片(R56)と、受容体であるApoER2の細胞外領域全長(約800残基)の複合体の結晶構造解析を終え、その情報を元に変異体を作製してリガンド結合とリリースに関するメカニズムの解析を行った。またreelinのホモダイマー化にかかわるシステイン残基を決定し、論文として報告した。 班究2(LRP6系):LRP6細胞外領域の組み換え蛋白質と、リガンドであるDkk1との複合体についてネガティブ染色試料を用いた電子顕微鏡イメージングでその構造(二次元平均化画像)をえることに成功した。また結晶化へ向けて、上記の受容体とリガンドを共発現する安定細胞株の樹立に成功した。 研究3(LR11系):LR11のVps10pドメインについて中性pHでのリガンドペプチドとの複合体の3.3A分解能での構造決定に成功した。また、蛍光偏光法を用いて様々なペプチドリガンドとの相互作用を測定する系を確立し、新たなリガンドの発見およびLR11のVps10pドメインに結合するペプチドの配列モチーフを同定することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1については全長受容体とリガンドの巨大複合体の構造解析について、その最終精密化が遅れているものの、高次構造を左右するアミノ酸残基レベルの生化学的同定が予想以上にすすんだ。研究2についてもLRP6とDkk1の複合体の結晶化については遅れているが、電子顕微鏡イメージングによる構造決定は終了した。研究3については分解能の向上と最終構造精密化が終わっただけでなく、当初は予想していなかった重要な生理的リガンドペプチドを発見するなど、大きな進展があった。よって総合的には「おおむね順調に進展している」と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
研究1についての遅れは、主には担当していた研究分担者が転出したためであり、現在後任の教員のもと遅れを取り戻すべく努力しており、とくに計画を変更する必要は無い。研究2については、年度途中に競合するグループから構造決定の報告が複数あり、戦略の立て直しを迫られた。そして、今後は全長LRP6の構造情報取得とDkk1リガンド複合体の構造解析に絞って行うこととした。研究3は予想外に生理的・病理的メカニズムに迫る研究になってきたため、純粋な構造解析としての研究計画は多少変更し、細胞やマウスを用いた実験を海外の研究者と共同で行うことにした。
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