研究概要 |
オートファジーは、細胞が自己成分を消化し、新陳代謝などに貢献する機構であり、(1)新陳代謝、(2)細胞リモデリング、(3)細胞浄化(細胞内病的構造物の除去)、などに寄与している。我々は、これまでオートファジーに必須と考えられてきた Atg5/Atg7分子に依存しない新規メカニズムによるオートファジー機構の存在を発見し、"alternative macroautophagy"と命名した(nature, 2009)。本研究では、生体におけるオートファジーの意義を理解する為に、(1)新規オートファジー分子機構の解明、(2)両オートファジー経路の生物学的役割(Atg5依存性オートファジーと新規オートファジーの使い分けや生理的役割)の把握、(5)両オートファジー経路の変調による病態の解析を行なうことを目的とした。その結果、(1)に関しては、新規オートファジーにはUlk1, SH3GLB1等の分子が重要な役割を果たしている事を見出した。また、(2)に関しては、生物学的役割を把握する為に、Ulk1, SH3GLB1のノックアウトマウスの作製に成功し、前者においては血球系の分化増殖に異常が生じる事、後者においては発癌に至る事を見出した。(3)に関しては、上述した知見を下に、新規オートファジーと発癌や血液疾患との関連を確認した。さらに、新規オートファジーを制御できる複数の低分子化合物の同定に成功し、さらに本化合物が抗癌剤として有用である可能性を見出した。
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