研究課題/領域番号 |
22247017
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福井 宣規 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (60243961)
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研究分担者 |
田中 芳彦 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (00398083)
錦見 昭彦 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (70404019)
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キーワード | 器官形成 / Rac / 遺伝子改変マウス / シグナル伝達 |
研究概要 |
本研究は、Rac活性化を担うCDMファミリー分子群に焦点を当て、その遺伝子改変マウスを駆使して、「生命高次複雑系の構築や恒常性維持、機能発現におけるこれら分子の役割」を明らかにすると共に、その構造、シグナルネットワーク、細胞内動態に関する包括的な解析を行うことで、「各種受容体からRac活性化に至るシグナル伝達経路の全貌」を解明することを目的としている。本年度は4つの項目に関して研究を行い、以下のような成果を得ると共に、これら分子の構造決定や制御化合物の同定に成功する等、大きな進展があった。 1)心血管形成におけるDOCK1の役割とその制御機構 DOCK1 KOマウスでは出血傾向を示す。このため、血管平滑筋細胞と内皮細胞の接着応答を検討したところ、内皮細胞でDOCK1やRacをノックダウンすると、平滑筋細胞との接着が顕著に抑制されることを見いだした。両者の接着にNカドヘリンが重要な役割を演じることが知られているが、DOCK1 KOマウスでは、Nカドヘリンの局在が異常であった。このことから、、DOCK18-Racシグナルは、Nカドヘリンの局在制御に関わっていることが示唆された。 2)破骨細胞の分化・活性化におけるDOCK5の役割とその制御機構 破骨細胞の形態や多核化、骨吸収能につき解析した結果、DOCK5 KOマウスではこれらの機能が障害されていることを見いだした。この機能発現に重要なDOCK5のドメインを同定するため、アデノウイルスを用いて、破骨細胞に、欠失変異DOCK5を発現させる実験系を構築した。 3)NK細胞の遊走・活性化におけるDOCK2/DOCK5の役割とその制御機構 T細胞株であるEL4にGFPを融合させたGPIアンカー型のRae1を発現させ、NK受容体NKD2Dの局在をリアルタイムでモニターできる実験系を構築し、NKシナプス形成におけるDOCK2とDOCK5の機能解析を行った。 4)生体の恒常性維持におけるDOCK1/DOCK2/DOCK5の役割とその制御機構 マクロファージ、ミクログリア、好中球特異的にDOCK1、DOCK2、DOCK5の発現を欠くTKOマウスを用いて、貪食、遊走、インフラマソームの活性化につき、機能的および生化学的に解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
DOCK1が血管内皮細胞においてCXCR4の下流で機能するRac活性化のマスター分子であり、心血管形成に重要な役割を演じることを明らかにした(Circ.Res.2010)。その他の項目に関しても研究は順調に進行しており、本年度中に論文発表を行う予定である。また、複合体の構造決定や制御化合物の同定に成功する等、このシグナル系の包括的理解に向け、計画以上の進展がある。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進行しており、多くの成果が得られている。次年度は最終年度であるため、この成果をできるだけ早くまとめて論文発表を行うと共に、特に重要な成果に関しては、HPやマスメディア等を利用して広く国民に発信し、説明責任を果たしたい。
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