研究課題
基盤研究(A)
振動分光法は一般に構造生物学のための解析ツールとして認識されていないが、機能発現のための構造変化をモニターする解析ツールとして高い可能性をもつことを、我々は光受容蛋白質の研究で明らかにしてきた。本研究では、この手法を光に応答しない膜機能分子に拡張し、原子レベルでの構造変化を解明するための解析ツールとして確立する。具体的には、エバネッセント波を利用して溶液中での計測が可能な全反射赤外分光法(Attenuated Total Reflection FTIR spectroscopy)を利用した差スペクトル測定系を最適化し、イオンチャネル、イオンポンプ、回転モーター、レセプターなど種々の膜機能分子に対する新しい構造機能相関の情報を得る。本年度は以下の成果を得ることができた。研究の出発点となる全反射赤外分光測定系の最適化を行った。特に、私たちが開拓してきた高波数領域(4000-1800cm^<-1>)における差スペクトル測定を水溶液中で試みた結果、「水溶液中で蛋白質に結合した1個の水分子の水素結合変化を捉える」可能性が得られた。測定系の最適化と並行して、種々の膜機能分子の計測も開始した。特に最初に結晶構造が解かれ2003年のノーベル賞につながった有名なイオンチャネルであるKcsAに着目し、このチャネルがカリウムを選択的に透過する機構や酸性でチャネルが開く機構を解析した。本成果は現在、論文を執筆中である。これ以外にも、ATPのエネルギーを利用してナトリウムを能動輸送するポンプ蛋白質に対するナトリウムイオンの相互作用、緑や赤の色覚視物質に対するクロライドイオンの相互作用などの測定も試みた。これらの成果も含め、2010年には10編の原著論文を世に出すことができた。
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