研究課題/領域番号 |
22247024
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
神取 秀樹 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70202033)
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研究分担者 |
古谷 祐詞 分子科学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (80432285)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 赤外分光 / 膜タンパク質 / イオン / チャネル / レセプター |
研究概要 |
振動分光法は一般に構造生物学のための解析ツールとして認識されていないが、機能発現のための構造変化をモニターする解析ツールとして高い可能性をもつことを、我々は光受容蛋白質の研究で明らかにしてきた。本研究では、この手法を光に応答しない膜機能分子に拡張し、原子レベルでの構造変化を解明するための解析ツールとして確立することを目指している。具体的には、エバネッセント波を利用して溶液中での計測が可能な全反射赤外分光法(Attenuated Total Reflection FTIR spectroscopy)を利用した差スペクトル測定系を最適化し、イオンチャネル、イオンポンプ、回転モーター、レセプターなど種々の膜機能分子に対する新しい構造機能相関の情報を得ることを計画した。 これまでに全反射赤外分光測定系の最適化を行った結果、世界最高精度のスペクトルを得ることができた。これを用いて、我々が発見したナトリウムをポンプするロドプシンへのナトリウム結合を明らかにした(Nature Commun. 2013)。さらに、光駆動クロライドポンプであるハロロドプシンを用いて、タンパク質に結合した水分子1個を捉えることにも成功したが(BIOPHYSICS 2013)、この成果は世界最高峰の計測を実現した証明の1つである。 またこれまでの解析はすべてイオンの結合による差スペクトル測定であり、リガンドなどそれ自身が振動を有する系の実験は困難であった。しかしながら測定系を最適化する中で、内部振動を有する系の測定も十分、可能であると判断し、ペプチド輸送体へのペプチドの結合に伴う構造変化の計測を試みたところ、その測定にも成功している(PNAS 2013)。 これらの成果はそれぞれの分野において高く評価されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに、ロドプシンへのクロライドイオンやナトリウムイオンの結合、細菌のべん毛モータータンパク質へのナトリウムイオンの結合、V型ATPaseへのナトリウムイオンの結合、カリウムチャネルへのカリウムイオンの結合に伴うタンパク質の構造変化を計測することに成功した。またイオンの結合による差スペクトル測定だけでなく、リガンドなどそれ自身が振動を有する系の実験としてペプチド輸送体の計測にも成功した。これらはいずれもNature Commun., PNAS, JACS, J. Phys. Chem. Lett., Biochemistryなどの著名な雑誌に論文発表することができた。 当初の予定を上回る達成度と言うことができる。
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今後の研究の推進方策 |
計画は順調に進んでおり、この方向での研究を進める。最終年度となる平成26年度には、5年間の研究を総括する。当初の予定を上回る達成度を実現している一方、計測に成功していない研究例も多数ある。最終年度にはこれらをまとめ、光に応答しない膜機能分子に対して、赤外分光法が何ができるのかを結論したい。
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