研究課題/領域番号 |
22247025
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野地 博行 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (00343111)
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研究分担者 |
飯野 亮太 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (70403003)
田端 和仁 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (50403001)
林 久美子 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (00585979)
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キーワード | 1分子操作 / 1分子計測 / 分子モーター |
研究概要 |
ATP合成酵素のF_1モーターは、極めて高い効率でATP加水分解のエネルギーを回転運動に変換する分子モーターである。そのため、生体分子機械による化学-力学エネルギー変換のしくみを理解するうえで理想的な研究試料といえる。しかし、「なぜF_1が高効率で化学エネルギーを力学的仕事に変換できるのか?」という根源的課題は解かれていない。その原因は、これまでの1分子計測が回転子γに集中していた一方で、肝心のトルク発生部位であるβサブユニットの構造変化とそれによるトルク発生との関係が不明なためである。そこで本研究では、トルク発生ユニットを1個しか持たない単気筒F_1を開発する。さらに、βの構造変化に伴うトルクを実測し、さらにβの構造を直接操作する系を開発する。そして、この二つを組み合わせることで、「βの触媒反応・構造・トルクの関係」を明らかにしF_1モーターのトルク発生のメカニズムを解明する。 研究項目1「βの新しい計測・操作技術の開発」 βの1分子操作の基盤となる技術開発をおこなった。具体的にはβのC末ドメインの様々な部位にCys残基を導入し、biotinもしくはDNA等を共有結合させる。ここに、streptavidinもしくは相補的DNAを介して光ピンセットとの間をつなぐ長鎖DNA、アクチン線維、または長鎖ポリマーへの接続を試た。この過程において回転子γに長鎖DNAを接続し、DNAを糸巻きのように巻き取ることで2本鎖DNAの曲げ弾性の計測に成功した。本結果は論文として投稿している。 研究項目2「単気筒F_1の開発と応用」 「トルクを発生しないβ」の開発を行った。まずγと相互作用しているC末ドメインのループの大規模改変をおこなった。C末ループ領域の22アミノ酸残基をGlyに置換し、その構造を破壊した。すると、本来のトルクより50%低下した。本成果も論文として投稿している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までの成果により、F_1に長鎖DNAを接合し、操作する手法が確立された。また、F_1変異体の作成もほぼ完了し、その性質も調査している。最終年度に向け、これらを組み合わせてトルク発生機構の研究を推進する下地がそろったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は計画通り、変異体F_1の1分子操作をおこないトルク発生機構に関する研究を推進する。
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