研究課題/領域番号 |
22247031
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
馬渕 一誠 学習院大学, 理学部, 教授 (40012520)
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キーワード | 細胞質分裂 / タンパク質 / アクチン / ミオシン / 微細構造 / 収縮環 |
研究概要 |
1)収縮環形成とCdc12:分裂酵母のcdc12変異株(formin/Diaphanousタンパク質Cdc12の変異株)にF-アクチン結合ペプチドLifeact-mRuby融合タンパク質を発現させ、蛍光観察により分裂時期におけるアクチンフィラメントの動態を観察した。その結果、収縮環は形成されなかったが、分裂位置付近にアクチンパッチ構造が集まった。この構造について、コロニンCrn1とIQGAP Rng2の局在を調べた結果、収縮環の前駆構造ではなく間期におけるアクチンパッチと同じものであると推定された。 2)単離収縮環の収縮能の研究:分裂酵母の収縮環-細胞膜複合体を単離し、収縮環の収縮の条件を調べた。収縮はATPに特異的であり、pH 8が至適、カルシウム濃度は低い方がよいことがわかった。収縮に対してファロイジン、ファラシジン、ジャスプラキノライドなどのF-アクチン安定化因子は影響をおよぼさないようであった。アクチンの分子交換加速因子の影響については、adf1-1変異株から収縮環-細胞膜複合体を単離したが、ほぼ正常に収縮したので、ないと結論した。 3)収縮環の微細構造の研究:電子顕微鏡観察のためミオシン軽鎖-GFPを発現する分裂酵母の収縮環を含むゴーストを単離し、GFP抗体を用いた免疫電顕を行った。その結果、収縮環構造上にGFPのシグナルが観察された。エッチングーレプリカ法による細胞表層の観察のための試料作成を引き続き行っている。 4)卵細胞の分裂溝における収縮環関連因子局在の検討:ウニ卵、カエル卵の単離分裂溝における収縮環形成因子(Rho関連因子、formin/Diaphanous)の局在を決定するため抗体の精製、抗原の調製を行った。蛍光抗体法により、ウニ卵分裂溝でのウニEct2(RhoGEF)の局在を観察した。ウニformin/Diaphanousについては抗原の精製を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
収縮環形成におけるアクチンダイナミクスの役割の検討を、アクチン重合加速因子formin/Daphanousとアクチン脱重合因子ADFの働きをと押して行っている。分裂酵母のcdc12変異株では収縮環アクチンの重合がおこらないため、収縮環の形成はできないが、アクチンの分裂位置への集積は起こっていた。これは収縮環の前駆体である可能性があり、そうであれば収縮環成分のIQGAP Rng2を含むだろうと考えた。一方、エンドサイトーシスに働くアクチンパッチであればcoronin Crn1を含むと考えた。調べた結果Crn1を含むことがわかった。ADFの働きについては分裂酵母のADFの変異株adf1-1の解析が進んでいる。 単離収縮環-細胞膜複合体の研究は順調に進んでおり、あとはアクチン脱重合が収縮に伴うか、収縮に必須であるかを確認する作業が残っている。さらに収縮環の微細構造におけるミオシンの存在状態の研究にGFP抗体を用いた免疫電子顕微鏡法が利用できそうなことがわかった。 高等動物細胞(ウニ卵、カエル卵)の収縮環形成においてもRhoシグナルからformin/Diaphanousの経路の働きを単離分裂溝を用いて行っているが、抗原、抗体の準備が進行している。予備的な蛍光抗体法の結果も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
収縮環形成におけるアクチンのダイナミクスについて: 分裂酵母のアクチン脱重合タンパク質Adf1の変異株adf1-1中でアクチンの動きを観察するためLifeact-mRuby融合タンパク質を発現させてライブ観察を行う。 単離収縮環の収縮能と微細構造の研究について: 分裂酵母の収縮環-細胞膜複合体を単離し、その収縮の条件を調べている。アクチンのダイナミクスが収縮に伴っておこるのか、また収縮に必須なのかについて、生化学的実験を行いたい。すなわち収縮前と収縮後のアクチン量を測定する。ミオシンの必要性についてはブレビスタチンの阻害実験に加え、他の薬剤の検討やミオシン変異株の利用を検討する。ミオシンの免疫電顕により、微細構造上でミオシン構造を同定する試みをエッチングレプリカ法を用いて追求する。 分裂酵母の分裂位置に集合するキネシン様タンパク質Klp8について: Blt1との関連を確認し、遺伝子破壊の表現系をもう一度確認して研究をまとめる。 卵細胞の細胞質を利用した分裂の研究:カエル卵の細胞質を単離し油に封じ込めることによって疑似細胞を作る。この中でのアクチンの動態の観察を重ねることにより分裂期における収縮環の形成過程を明らかにする。 間期の分裂酵母のアクチンのダイナミクスについて: 間期の分裂酵母のアクチンを細胞中で安定化すると激しい束化がおこり、細胞中で運動することを見いだしたが、この動きの要因が何かについて、V型ミオシンや他のミオシンの関与を調べる。
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