研究課題/領域番号 |
22247033
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
阿形 清和 京都大学, 理学研究科, 教授 (70167831)
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キーワード | 器官形成 / ニワトリ胚 / ES細胞 / キメラ解析 / トランスクリプトーム |
研究概要 |
プラナリアが全能性幹細胞から脳を再生する過程で、幹細胞は周辺の分化細胞と複雑な相互作用を繰り返して秩序ある形と機能をもつ脳を形成していくことが分かった。 そこで全能性幹細胞であるマウスES細胞あるいはウズラ胚盤葉の細胞シートを、ニワトリ胚の予定脳領域に移植して周囲の細胞と相互作用させたところ、ニワトリ胚の中でマウスやウズラの脳をつくることに成功した。 本研究では、マウスES細胞あるいはウズラ胚盤葉細胞をニワトリ胚へ移植後、脳の形成過程の各ステップからmRNAを精製して、次世代シークエンサーでmRNAを大量シークエンスし、バイオインフォマティクスでマウス由来あるいはウズラ由来のmRNAとニワトリ由来のmRNAを仕分けし、同時進行的に起きている幹細胞の反応と周辺細胞の反応をデータベース化して、脳形成過程で起きている複雑な分子イベントの全容を明らかにし、脳形成の作戦を立てることを目的としている。 今年度において、ウズラ初期胚のトランスクリプトーム解析を行い、それらをバイオインフォマティックスによって解析したところ、ほとんどの転写産物について、ニワトリの遺伝子由来なのか、ウズラの遺伝子由来なのかを識別できることが判明した。この発見は、今後の発生学研究に極めて重要な知見をもたらしたと考えている。すなわち、従来、ニワトリ/ウズラのキメラを作成して解析されていた、免疫発生系、神経堤細胞系譜の解析が全て遺伝子レベルで解析可能になったことを示唆している。 今回のこの発見を受けて、本研究ではウズラのES細胞の培養条件の確立についても開始した。そして、ウズラ胚においても、ERK/GSK3のインヒビターを入れることによって、マウスのES細胞と同様なドームコロニーを形成する細胞の取得に成功した。残念ながらまだ正常キメラは形成されていないが、FGF/activin系で培養した細胞からはCAM移植によって奇形腫が形成されたので、ウズラの全能性細胞の培養系の確立もそう遠いものではない手ごたえを得られた。これらの新規実験系の開発によって、来年度から、かなり順調に実験が進められる見通しがついたことが本年度の最大の成果といえよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
次世代シークエンサーのバージョンアップの当初の予定よりか半年ずれたこと、また、バージョンアップ後も試薬の発売停止などのトラブルが生じたために、予定よりか振興が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
バイオインフォマティック解析によって、ほとんどの遺伝子産物について、ニワトリとウズラで識別できることが判明したことは大きく、より自然に近い形でキメラ解析できるようになったことから、来年度からはニワトリ/マウスのキメラ解析から、よりニワトリ/ウズラのキメラ作成・シランスクリプトーム解析へとシフトしていく予定である。
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