プラナリアが全能性幹細胞から脳を再生する過程で、幹細胞は周辺の分化細胞と複雑な相互作用を繰り返して秩序ある形と機能をもつ脳を形成していくことが分かった。そこで本研究では、マウスES細胞をニワトリ胚へ移植後、キメラ胚での脳の形成過程の各ステップからmRNAを精製して、次世代シークエンサーでmRNAを大量シークエンスし、バイオインフォマティクスでマウス由来のmRNAとニワトリ由来のmRNAを仕分けし、同時進行的に起きている幹細胞の反応と周辺細胞の反応をデータベース化して、脳形成過程で起きている複雑な分子イベントの全容を明らかにし、脳形成の作戦を立てことを目標としている。 そこで、EGFPを発現するgreenマウス由来のES細胞をニワトリ胚盤葉の予定小脳領域への移植し、マウスの小脳初期発生の三次元構築を行い、マウス/ニワトリ・キメラ胚を用いた次世代シークエンサーによるトランスクリプトーム解析を行った。また、ニワトリ胚とウズラ胚とのキメラ解析をやるために、ウズラ胚のトランスクリプトーム解析についても行った。 その結果、マウス/ニワトリ・キメラ胚においては、ロッシュ454では読むコピー数が不足しており、定量的な解析をするためには不十分であることが判明した。ただ、454を用いたシークエンスでトランスクリプトーム解析をするためのリファレンスの作成には成功した。現在、イルミナのMiSeqを購入して、100倍数の解析データをとることで、リファレンスデータに当てて定量的なデータを取り直している。しかし、454を用いたシークエンスによって、ニワトリ/ウズラ胚キメラであってもトランスクリプトーム解析でほぼ98%の遺伝子について、ニワトリ由来かウズラ由来かを識別できることが判明した。そこで、2i培地でニワトリ・ウズラ胚のES細胞の作成を行い、今後のキメラ解析の簡易化を行う試金石を作ることに成功した。
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