研究概要 |
神経細胞の樹状突起はシナプス入力または感覚入力を受容するアンテナとして働き、神経細胞ごとに特徴的な樹状突起パターンを発達させる。このような樹状突起パターンは、初期発生においていったん形成された後、様々な環境条件に応じてその形態を変化(リモデリング)させることが知られているが、具体的な分子メカニズムには未だ不明な点が多い。 ショウジョウバエ末梢神経系のdendritic arborization (da) neuronの一部では、蛹期において幼虫型の樹状突起が除去されて新たに成虫型の樹状突起を再伸長する。すなわち大規模な樹状突起のリモデリングが起こるため、樹状突起パターンのリモデリングを調節する機構を研究する有用なモデル系となる。この系を用いて、約1,500系統の変異体系統を対象にした遺伝学的なスクリーニングを行い、樹状突起のリモデリングに異常を示す変異体を多数分離した。その中の一つの変異体に注目してより詳細に解析した結果、正常な樹状突起の分岐パターンを保ったまま全体が縮小したミニチュア型の樹状突起へとリモデリングしてしまうことを明らかにした。さらに、野生型の個体を飢餓条件下において体のサイズを小さくしたところ、樹状突起パターンも体の大きさに合わせて縮小すること、つまり樹状突起パターンのスケーリングが起こることが明らかとなった。 次に、この変異体の原因遺伝子を同定するために、次世代シーケンサを用いて変異体の全ゲノム配列を決定し解析したところ、この変異体では、植物からヒトまで保存されたCHORD/morgana遺伝子に1塩基欠失によるフレームシフトが生じていることが分かった。この遺伝子の野生型cDNAの発現により表現型がレスキューされたため、CHORD 遺伝子が樹状突起のミニチュア表現型の原因遺伝子であると結論した。
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